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政党ビラ配布 東京地裁が無罪判決 「違法」基準を明示
 
 東京都葛飾区のマンションでの政党ビラ配布を巡って住居侵入罪に問われた男性被告(58)に対し、同罪の成立自体を認めず無罪を言い渡した28日の東京地裁判決は、どのような場合に罪に問われるのかという一定の「基準」を示した。同種事案の摘発が続いた中で、今後の判決や捜査当局の判断に影響を与える可能性もある。

 ◇表現の自由と住民の不安…バランスを慎重に考慮

 ■個別事情で結論

 「表現の自由を定めた憲法21条の保障を受けるとしても、他人の住居の平穏を不当に害することは許されない」。判決は無罪を言い渡しつつも、「表現の自由」と「住民の不安」との間で、微妙な判断を示した。憲法の保障を全面に出した弁護側主張に対し「立ち入り自体に不安感、不快感を感じる居住者の心情も尊重されるべき」と指摘。しかし、「それを根拠に直ちに社会通念上容認されない行為に当たるかとなると、なお慎重に検討する必要がある」とも述べ、立ち入りの目的や態様など個々の事情を考慮して結論を導き出した。

 ■集合ポスト許容

 判決は「集合郵便受けに投かんする程度の立ち入りなら、居住者のプライバシー侵害もわずか。ビラの内容が善良な風俗を乱したり不法なものでない限り、当然に許容される」との基本的な位置づけを明示。オートロックのマンションで、居住者がドアを開けたのに乗じて入りビラを配るなどの行為は「違法性を帯びる」と指摘した。
 今回のような、オートロックではなく管理人が不在がちな場所で、集合郵便受けではなくドアポストまで立ち入る行為については(1)昼間(2)短時間(今回は7、8分)(3)目的はビラ配布だけ−−のような場合、「明らかに許容されない行為であるとの社会的合意が未だ確立しているとは言い難い」と判断した。
 ただ、プライバシーや防犯意識の高まりも判決は重視しており、今後の意識変化によっては今回のケースでも「許容されない行為」に転じる可能性があるとも読める。

 ■住民の警告重視

 個々の事情の中で判決が重視したのは、来訪者に対する住民の意思表示だった。判決は「いかなる者の出入りを許すかは各マンションで自由に決められ、対外的に明示されていれば、警告に従わず立ち入れば罪が成立する」と断じた。今回の事件では張り紙の内容や掲示場所の「不備」から、意思表示が明確ではなかったとされたが、事件後、マンションの前には「関係者以外の立ち入り禁止」と書かれた看板が設置された。来訪者が一見して分かるもので、今回の判決に沿えば、今後は同様の行為が刑事罰に問われる可能性もある。

 ◇「拒否認識」程度で判決に差

 今回と同様に住居侵入罪に問われた東京都立川市の防衛庁官舎へのビラ配り事件は、1、2審とも住居侵入罪の成立を認定した。そのうえで、その行為に刑事罰に値するほどの違法性があるかどうかを検討し、1審は無罪、2審は逆転有罪となった。
 防衛庁官舎の事件は、昼間にオートロックではない集合住宅の共用部分に入りドアポストにビラを配布した行為が今回と共通している。防衛庁官舎事件が逆転有罪、今回が無罪となったのは、摘発に至る過程が大きく違うためとみられる。
 防衛庁官舎事件の2審判決によると、自衛隊のイラク派遣に反対するビラを配った男女3人の被告らに居住者は抗議し、管理者が禁止事項表示板を出入り口などに掲示したうえ、同様のビラ配布を見かけた場合は直ちに110番通報することを求める文書も居住者に配布していた。にもかかわらず男女が配布を繰り返したことから「立ち入り行為が管理者の意思に反することが明らか」として有罪と認定された。
 一方、今回の事件で被告男性は過去2回ドアポストに投かんしながら抗議された経験はなく、立ち入り禁止を求めるマンション側の張り紙も「チラシ・パンフレット等広告の投かんは固く禁じます」と書かれ、政治ビラを禁止する趣旨が明確でなかった。さらに張り紙の掲示も目立たない場所で、判決は「被告が立ち入った際に読んだ証拠もない」と指摘。「防衛庁官舎への侵入事件と本件とは相当に事案を異にする」と判断した。

 ◇警察・検察、一斉に不満

「住居の平穏を脅かされたと感じた人がいたことは事実。そうでなければ、住人に取り押さえられたり、110番通報されるほどのことはなかった」。無罪判決を聞いた警視庁幹部は、首をかしげながら感想を漏らした。「住民の被害感情を考慮すると、容易に放免するわけにはいかない事例だった。法律が保護すべき利益を正しくとらえてもらえれば、このような判決にはならなかったのでは」と言う。
 ある法務・検察幹部も「そもそもこういう事案を積極的に立件しようとは思わない。しかし、この事件は被害者が警察を呼んでいた」。「昔と違い、地域にどんな人が来たかも分からない。社会不安は大きくなっている」と語った。
 別の幹部は「判決文は微妙な部分がある。管理人がいるなら、まず配布していいか聞くべきではなかったか」とビラ配布の姿勢に疑問を示した。さらに別の幹部は「判決で『立ち入りは住居権者の意思に反する』と判断している点を見逃してほしくない。住人の意思はノーだ。無罪というのは無理のあるこじつけの判決」と、一様に判決への不満を口した。
(毎日新聞) - 8月29日10時19分更新

無罪判決を受け、東京地裁前で支援者と共に喜ぶ荒川庸生被告(中央)=東京・霞が関で28日、竹内幹写す
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政党ビラ配布に無罪判決 住居侵入に当たらず

 ■東京地裁「社会通念」基準に判断
 共産党のビラを配布するためにマンションに無断で入ったとして、住居侵入罪に問われた東京都葛飾区の僧侶、荒川庸生被告(58)の判決公判が28日、東京地裁で開かれた。ビラ配りが住居侵入罪に当たるかが争点だったが、大島隆明裁判長は「住居侵入罪に当たる違法な行為とはいえない」として、無罪(求刑罰金10万円)を言い渡した。
 判決で、大島裁判長はマンションへの立ち入りが住居侵入罪に当たるかについて「社会通念上、許される行為かどうかによって判断するしかない」とした。その上で、ビラ配りの違法性を検討し「商業ビラを配る業者もおり、マンションへの立ち入り行為を刑事罰の対象とする社会通念は確立しているとはいえない」と結論づけた。
 また大島裁判長は「立ち入り禁止が明示してあって、その警告に従わなければ住居侵入罪に当たる」との判断を示した。
 マンションには「広告の投函(とうかん)はお断り」との張り紙があったものの、判決は「政治的なビラ配布を禁じていたことが来訪者に伝わるように表示されていなかった」とした。
 起訴状によると、荒川僧侶は平成16年12月23日午後、葛飾区内のマンションに入り、共同廊下から各戸のドアポストに共産党東京都議団発行の「都議会報告」などを配布した。
 検察側は「被告の立ち入りでマンション住民は不安を持った。他人の権利を侵害することは許されない」と主張。弁護側は「言論弾圧で違法な捜査」と、公訴棄却を求めていた。
 政治思想を記したビラの配布では、市民団体のメンバーが東京都立川市の自衛隊官舎敷地内に無断で入ってビラを投函した「立川反戦ビラ事件」がある。メンバーは一審・東京地裁八王子支部で無罪を言い渡されたが、東京高裁で逆転有罪となり、上告している。
 そのほか、社会保険庁職員と厚生労働省職員が共産党機関紙を配ったとして国家公務員法違反罪に問われた例がある。社保庁職員は1審有罪となり控訴している。厚労省職員は1審審理中。
     ◇
 岩村修二東京地検次席検事の話「検察の主張が理解されず遺憾である。判決内容を検討し、上級庁とも協議の上、控訴の要否を判断したい」
     ◇
 【視点】
 ■求められる立ち入り側の配慮
 共産党ビラ配布事件で、マンションの共同廊下から各戸のポストにビラを入れて住居侵入罪に問われた被告人を無罪とした東京地裁判決は、ビラ配布が住居侵入に当たるか否かについて、社会通念を基準にした。商業ビラのポスティングなどが日常化している現状を重視した判決といえる。
 公判で弁護側は「共同廊下は住居に当たらない」と主張していたが、判決は「住居に当たる」とした。その上で、住居侵入罪を構成するか否かについて(1)マンション立ち入りの動機(2)立ち入り方(3)投函されたビラの内容−などを検討した。
 その結果、(1)は「住民に閲覧してもらう機会を高めるため」(2)は「昼間の時間帯に誰にもとがめられず立ち入っている」(3)は「共産党の活動内容で、犯罪を助長するものではない」−と判断。「最近のプライバシー意識の高まりを考慮しても、刑事罰に当たるとの社会通念は確立していない」とした。
 ただ、判決は「被告人の行為はマンション居住者への配慮を欠く面がないとはいえない」と、住民の平穏に暮らす権利にも配慮を示し、立ち入りが無制限に許されるものではないことも指摘している。
 1審で無罪だった「立川反戦ビラ事件」も、2審では立ち入りを禁じた管理者の意思に反した侵入を重視して逆転有罪とした。立ち入り側が住民に不安を感じさせないように配慮する必要があるのは言うまでもない。(半田泰)
(産経新聞) - 8月29日8時2分更新


ビラ配布 「住居侵入」否定し無罪 東京地裁
 
 東京都葛飾区のマンションに共産党のビラを配布するために侵入したとして、住居侵入罪に問われた僧侶、荒川庸生(ようせい)被告(58)に対し、東京地裁は28日、無罪(求刑・罰金10万円)を言い渡した。大島隆明裁判長は「ビラ配布の目的だけであれば、共有部分への立ち入り行為を刑事上の処罰の対象とするとの社会通念は、いまだ確立していない」と指摘し、住居侵入罪の成立自体を否定した。
 公判で弁護側は「ビラ配布は政治的表現の自由の一つとして憲法で保障されている。玄関はオートロックではなく、ドアポストにビラを配布しただけで住居侵入罪は成立しない」と、無罪か公訴棄却を主張。検察側は「立ち入り拒否の張り紙が掲示されており『侵入』に当たることは明白。政治的意見の表明であっても、他人の権利を侵害することは許されない」と指摘していた。
 判決はまず、マンションへの立ち入りが許されるかどうかについて「他人の住居の平穏を不当に害することは許されず、憲法だけを根拠に直ちに正当化することは困難。目的や態様に照らし、法秩序全体の見地から社会通念上容認されざる行為と言えるか否かによって判断するほかない」と指摘した。
 そのうえで(1)政治的主張のビラ受領で、住民の平穏が侵害されるとの不安感を抱くことは少ない(2)配布の際の滞在時間は7、8分程度でプライバシー侵害の程度もわずか(3)ビラ投かんでの立件はほとんどない−−などと判断。「立ち入り拒否の張り紙は商業ビラの投かん禁止とも読み取れ、マンション側が政治目的のビラ配布を禁じていたとしても、その意思表示が来訪者に伝わる表示となっていない」として、正当な理由のない違法な立ち入り行為に当たらないと結論付けた。
 荒川被告は04年12月23日午後2時20分ごろ、葛飾区の7階建てマンションに入り、共産党の「都議会報告」などのビラを3〜7階27戸のドアポストに入れた、として起訴された。注意した住民が現行犯逮捕し、23日間にわたり拘置された。
 ビラ配りを巡っては、東京都立川市の防衛庁官舎に自衛隊イラク派遣に反対するビラを配って同罪に問われた男女3人を1審・東京地裁八王子支部が無罪(04年12月)としたが、東京高裁が昨年12月に罰金10万〜20万円の逆転有罪判決を言い渡した(被告側が上告中)。【佐藤敬一】
 ▽岩村修二・東京地検次席検事の話 検察の主張が理解されず遺憾である。判決内容を検討し、上級庁とも協議の上、控訴の要否を判断したい。
 ▽弁護団の話 当然の結論。憲法が保障する言論の自由の重要性を明確にすることで「憲法の番人」としての司法の役割が見事果たされた。検察が控訴することは断じて許されない。
 ▽土本武司・白鴎大法科大学院教授(刑事法)の話 ビラ配りなどを禁止するとの張り紙がされており、ビラ配りを拒否する住民の意思は明白だ。政治的主張の表現行為であっても「住居の平穏」という他人の権利を侵害することは許されない。違法性が軽微とはいえ、ゼロでないのであれば有罪とすべきで、裁判所の判断に誤りがあると言わざるをえない。
 ▽白取祐司・北海道大大学院教授(刑事訴訟法)の話 判決は住民の不安感や不快感に配慮しつつ、刑事罰の対象にすべきだという社会通念は確立されていないと判断して、無罪とした。社会常識に沿った妥当な結論だ。一方で、憲法で保障された表現の自由を十分に考慮していない点には不満が残る。無罪になったとはいえ、起訴されたことで、被告自身は大きな社会的ダメージを受け、市民運動への萎縮(いしゅく)効果も生じさせた。特定の政治的活動を狙い撃ちにして起訴した検察の責任が問われるべきだろう。
(毎日新聞) - 8月28日17時7分更新

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無罪判決を受け、東京地裁前で喜ぶ支援者=東京・霞が関で28日午前10時7分、竹内幹写す


マンションビラ配り無罪 東京地裁判決「住居侵入といえぬ」

 共産党のビラを配布するためにマンションに無断で入ったとして、住居侵入罪に問われた東京都葛飾区の僧侶、荒川庸生被告(58)の判決公判が28日、東京地裁で開かれた。ビラ配りが住居侵入罪に当たるか、起訴が検察官の裁量権の逸脱に当たるか−が争点となったが、大島隆明裁判長は「住居侵入罪に当たる違法な行為とはいえない」として無罪(求刑罰金10万円)を言い渡した。
 判決で、大島裁判長はマンションへの立ち入りが住居侵入罪に当たるかについて「社会通念上、許される行為かどうかによって判断するしかない」と判断。
 その上で、ビラ配りの違法性を検討し「商業ビラを配る業者もおり、マンションへの立ち入り行為を刑事罰の対象とする社会通念は確立しているとはいえない」と結論付けた。
 事件の起訴については「捜査手続きに違法性はない」として、弁護側の主張を退けた。
 起訴状によると、荒川僧侶は平成16年12月23日午後、葛飾区内のマンションに入り、共同廊下から各戸のドアポストに共産党東京都議団発行の「都議会報告」などを配布した。
 マンションの共同玄関は無施錠で、掲示板には「広告の投函(とうかん)はお断りします」との張り紙があった。
 検察側は「被告の立ち入りでマンション住民は不安を持った。他人の権利を侵害することは許されない」と主張。弁護側は「言論弾圧で違法な捜査」と、公訴棄却を求めていた。
 政治思想を記したビラの配布では、市民団体のメンバーが東京都立川市の自衛隊官舎敷地内に無断で入ってビラを投函した「立川反戦ビラ事件」がある。
 メンバーは1審・地裁八王子支部で無罪を言い渡されたが、東京高裁で逆転有罪となり上告している。
 このほか、社会保険庁職員と厚生労働省職員がそれぞれ共産党機関紙を配ったとして国家公務員法違反罪に問われたり、元教師が卒業式会場で週刊誌のコピーを配布するなどして威力業務妨害罪に問われた例もある。
(産経新聞) - 8月28日16時40分更新


政党ビラ配布 東京地裁が無罪判決 「違法」基準を明示

無罪判決を受け、東京地裁前で支援者と共に喜ぶ荒川庸生被告(中央)=東京・霞が関で28日、竹内幹写す(毎日新聞)10時19分更新
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<ビラ配布無罪>「重い意味ある」…市田共産書記局長

 共産党の市田忠義書記局長は28日の記者会見で、マンションに共産党のビラを配布して住居侵入罪に問われた僧侶が東京地裁で無罪判決を受けたことについて「国民の権利への弾圧が強まっているなかで、こういう判決は大変重い意味がある」と評価した。
(毎日新聞) - 8月28日19時19分更新


ビラ配布 「住居侵入」否定し無罪 東京地裁

無罪判決を受け、東京地裁前で喜ぶ支援者=東京・霞が関で28日午前10時7分、竹内幹写す(毎日新聞)17時07分更新
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政党ビラ配布は住居侵入に非ず、58歳僧侶に無罪判決

 共産党のビラを配るため東京都葛飾区内のマンションに立ち入ったとして、住居侵入の罪に問われた同区の僧侶、荒川庸生被告(58)の判決が28日、東京地裁であった。

 大島隆明裁判長は、「マンションへの立ち入り行為に正当な理由がないとはいえず、違法な行為とは認められない」と述べ、荒川被告に無罪(求刑・罰金10万円)を言い渡した。

 判決によると、荒川被告は2004年12月、7階建て分譲マンションに立ち入り、各階を回って、共産党の「都議会報告」や「区議団だより」などのビラをドアポストに入れた。マンションはオートロック式ではなかった。

 判決はまず、マンションへの立ち入り行為が住居侵入罪にあたるかどうかについては、「目的や状況が社会通念上、容認できない行為かどうかによって判断すべきだ」と述べた。
(読売新聞) - 8月28日13時50分更新


共産党ビラ配布で荒川さん無罪

共産党のビラ配布事件で住居侵入罪に問われた裁判で、無罪判決を受けて、支援者らとともに喜ぶ荒川庸生さん(手前右)。政党の議会報告配布という目的の正当性を認めた(28日、東京地裁前)(時事通信社)13時00分更新
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妥当な判決を受け入れよ

 イラクへの自衛隊派遣後、都内では、「イラク派兵反対」や「憲法を守れ」などと訴えるビラ、政党機関紙の配布が摘発される事件が相次いだ。東京地裁は二十八日、政党ビラを各戸配布するためマンションに立ち入り、住居侵入罪に問われた男性に対し、無罪(求刑罰金十万円)の判決を言い渡した。

 四件の摘発事件のうち、無罪判決は同じく住居侵入罪に問われた「立川反戦ビラ事件」の一審判決(二審有罪、上告中)に続いて二件目。反戦平和活動などを「狙い撃ち」にしたと言わざるを得ない強引な逮捕、起訴の不当性があらためて浮き彫りになった。警視庁、検察庁は判決を重く受け止めるべきである。

 男性は二〇〇四年十二月、葛飾区内のマンションに立ち入り、各戸の玄関ドアポストに共産党の「都議会報告」「区議団だより」などを投函(とうかん)していたところを逮捕された。

 判決は、ビラを投函する目的で通路などに短時間立ち入ることは「明らかに許容されない行為という社会的合意が確立しているとは言い難い」と指摘。また、同マンション住民の立ち入り拒否の合意も「来訪者に伝わるような表示がされていたとはいえない」とし、住居侵入罪にはあたらないとした。政治的表現の自由と、住居の平穏、プライバシーとを慎重に検討した結果であり、常識的な判決と言えるだろう。

 問われるのは、警視庁、検察庁である。商業ビラ配布が事実上黙認されている社会情勢の中で、特定の政治ビラを「狙い撃ち」にした摘発には疑問が残る。さらに、同じような配布行為にもかかわらず、今回の事件と「立川反戦ビラ事件」では住居侵入罪を適用。その一方で、中央、世田谷区での事件では、四十年近くも封印されてきた国家公務員法第一〇二条(政治的行為の制限)違反を持ち出すなど、「逮捕、起訴」そのものが目的だったとの疑いをぬぐえない。強制捜査の威圧によって、政府の政策に異を唱える勢力への牽制(けんせい)ではないのか。

 今回の住居侵入罪をめぐる議論も、ビラを配布した側と、それを受けるマンション住民側との衝突という局面だけを見ては本質を大きく見誤るだろう。市民の権利を守る形を取りながら、市民のより重要な別の権利が国家権力によって侵害される。そのような危険性を憂慮すべきである。

 その意味で、今回の判決では、政治的表現の自由の優越性や、表現の自由と民主主義の関係などについて、十分な言及がなかったのは不満が残る。

 今後、警察、検察の権力行使のあり方についても厳しく監視し、国民的議論を深める必要がある。不当な強制捜査、逮捕、起訴、拘置などは、重大な人権侵害になることをあらためて強調したい。

神奈川社説


ビラ配り無罪 安易な摘発を戒めて

 政党ビラを配布し、住居侵入の罪に問われた男性被告に、東京地裁は無罪を言い渡した。素直に受け入れられる判決だ。

 きっかけは、ささいなことだった。逮捕、起訴に行き過ぎがなかったか疑問が残る。東京都内では同じような捜査が最近、相次いでいる。憲法が保障する「表現の自由」を脅かされては大変だ。判決を重く受け止めたい。

 2004年12月、都内在住の被告が葛飾区のマンションに立ち入り、各戸のドアポストに共産党の「都議会報告」などを入れたのが発端だ。その際、住民から「迷惑だからやめろ」と抗議され、被告は「正当な政治活動だ。(ビラが)迷惑だったら入れない」と答え、直後の通報で現行犯逮捕された。

 判決は、立ち入りが容認できる基準を示しながら、昼間に短時間、各戸に政党ビラを配った行為は、社会通念上「明らかに許されないとはいえない」と判断した。

 検察側は、マンション住民の平穏に暮らす権利を侵害している、と主張した。判決は、防犯意識やプライバシー意識の高まりに触れつつ、今回の行為について「住民の平穏やプライバシーを侵害されるとの危惧(きぐ)や不安感を抱くことは少ない」とした。

 弁護側は「『表現の自由』に基づく正当行為で、刑事罰を科すほどの違法性はない」と主張していた。

 ビラは日ごろ、商業広告などで幅広く利用されていて、情報伝達に便利な手段だ。文面でひぼう中傷するのは許されないが、政治的な活動の場合は、より保護されていい。摘発について「言論に対する威圧だ」との批判が起きるのも当然といえる。

 政治が絡んだビラ配り事件は都内で04年から4件続き、司法判断は割れている。立川市の自衛隊宿舎での「イラク派兵反対」ビラ配り事件は、一審は表現の自由を重んじて無罪としたが、二審は罰金刑を言い渡した。上告している。

 共産党機関紙の号外を近所で配ったとして、国家公務員法違反の罪に問われた社会保険庁職員は一審で執行猶予付きの罰金刑を受け、控訴している。

 今回の被告は、罰金10万円の求刑に対し、逮捕後23日間の拘置と1年以上の裁判を強いられた。精神的、肉体的にかなりきつい。警察や検察は心に刻んで、慎重な捜査を心掛けるべきだ。控訴はむろん、すべきではない。

 表現活動が制約される社会は、針路が危うくなる。表現する側が一定の節度を保つのは必要としても、委縮させるようなことがあってはならない。


信濃社説


政党ビラ判決・自由な論議損なうだけだ

 共産党のビラを配るために東京都葛飾区のマンションに立ち入ったとして住居侵入罪に問われた僧侶に東京地裁が無罪の判決を言い渡した。
 マンションの掲示板には「チラシ・パンフレット等広告の投函(とうかん)は固く禁じます」との張り紙がしてあり、住民の意思に反した住居侵入、というのが検察側の主張だった。
 しかし判決は「プライバシーや防犯意識の高まりを考慮しても廊下など共用部分の立ち入りが処罰の対象とする社会通念は確立してない。張り紙は主として商業ビラの配布を禁止しているように読め、政治ビラを含めて一切のビラを禁じる趣旨であることが明らかでない」とし、「立ち入りは正当な理由がないとはいえず、違法とは認められない」だ。
 この僧侶は2004年12月、東京都内のマンションに立ち入り、廊下を歩きながら各戸のドアポストに同党の都議会報告などを次々と入れて逮捕された。
 判決は、廊下、階段などの共用部分も「住居」に当たるとした。そして他人の「住居の平穏」を不当に害することは許されないとも述べている。各戸に配られるビラについて「憲法21条(表現の自由)だけを根拠に直ちに正当化することは困難」と述べる。
 確かに表現の自由も居住者の権利との調整が必要になる。その点では判決が「どのような者の立ち入りを許すかはマンションの管理組合などが自由に決められる事項である」とし、「それが対外的にも明示されていて、その警告に従わずに立ち入れば住居侵入罪が成立する」という調整基準を示したのも注目される。
 場合によっては、政党ビラも、玄関ホールに設置された集合ポストへの投げ入れにとどめ、各戸配布の自粛もあり得るだろう。
 しかし、政党ビラの配布は憲法で保障された「表現の自由」に含まれる行為。形式的に居住者の意思に反する立ち入りであったとしても、それを刑事裁判にかけることは行き過ぎた刑罰権の行使に見えてしまう。
 ビラの配布をめぐっては警視庁が04年以降、相次いで市民団体メンバー、社会保険庁職員、厚生労働省課長補佐らを逮捕している。いずれもビラには政治的主張が含まれ、それらの取り締まり色彩が濃厚というのが気になる。
 市民団体メンバーの場合は、自衛隊宿舎にイラク派兵反対のビラを配ったとして起訴された。東京地裁は無罪にしたが、東京高裁は一審判決を破棄、罰金刑とした。メンバーは上告中だ。
 いずれにしろ刑事罰則を背景に政党ビラの配布をやめさせるようなことは、自由な論議を損ない、穏当ではない。

(8/29 9:35)琉球社説



【ビラ配り】表現の自由の重さを

 共産党のビラを配るため都内のマンションに立ち入り、住居侵入罪に問われた男性について、東京地裁は無罪と判断した。

 2004年以降、東京では政治的なビラの配布が相次いで摘発され、司法判断も分かれている。だが、表現の自由の重さを考えるなら、無罪判断は当然だろう。

 判決が論拠としたのは、ビラ配布目的のマンションの廊下など共用部分への立ち入りを処罰対象とする社会通念は確立していない、事件があったマンションの立ち入り拒否の掲示は商業ビラが対象、などだ。

 政治目的のビラ配りに対する住民の対応を含め、マンションの実情を詳細に検討した上での判断であり、捜査当局の安易な摘発に対する警鐘といえる。

 ただし、形式的に犯罪行為が成立するか否かに重きを置きすぎると、表現の自由という重要な問題が脇に追いやられかねない。

 最高裁で争われている、東京の市民団体の3人が自衛隊のイラク派遣に反対するビラを自衛隊宿舎で配った事件では、一審、二審ともに宿舎への立ち入りが住居侵入に当たるとした。ビラが居住者に不快感を与えたことを認めた点でも共通する。

 にもかかわらず、一審無罪、二審有罪(罰金刑)と判断は分かれた。表現の自由との関係をどうみるか、が違いとなって表れた格好だ。

 一審判決は、マンションなどで商業用ビラの投げ込みが放置されている現状を取り上げ、広告チラシより「優越的地位」にある政治的ビラを取り締まるのは憲法に照らし疑問、とした。この点に踏み込まなかった二審判決とは決定的に異なる。

 思想信条の自由や表現の自由は、民主主義にとって最も根幹をなすものだ。自分とは異なる意見ではあっても、それを表明する自由は認めることによって、健全な民主社会が維持されていく。

 むろん、表現の自由によってどんな行動でも許されるわけではない。プライバシー意識が高まる中、マンションなどでの政治的ビラの配布にはさまざまな考え方があろう。それでも、表現の自由は最大限尊重されるべきであり、安易な取り締まりはもってのほかだ。

 自民党の加藤紘一元幹事長の実家などが放火される事件があったばかりだが、言論を暴力で封じようとする動きが後を絶たない。そうした時代だけに、表現の自由の大切さを国民一人一人が深く考えたい。

高知社説


飲酒事故で3児死亡 厳罰化の趣旨生かせず
                       '06/8/28

 むごい事故がまた起きた。福岡市東区の博多湾に架かる「海の中道大橋」で多目的レジャー車(RV)が、飲酒運転の乗用車に追突されて海に転落、幼児三人が水死した事故。飲酒運転の根絶へ向け、一緒に飲んだ者、飲ませた店なども含めて、社会全体の意識改革を急ぎたい。

 事故があったのは二十五日夜。橋の上で追突され、弾みで歩道に乗り上げ、ガードレールを突き破って約十四メートル下の海に落ちた。

 脱出後、暗い海に潜り、車内からまず長女(1)、続いて二男(3)を連れ出した母親(29)。四回目に潜った時、車に長男(4)が閉じこめられたまま海底に沈んだ。幼い二人を抱き、立ち泳ぎをしながらひたすら救助を待った父親(33)。わが子三人を一度に奪われた両親の必死の行動に胸が詰まる。

 乗用車を運転していた福岡市職員の男(22)は事故の前、居酒屋とスナックでビールや焼酎を飲んだという。追突後、約三百メートル逃げ、道交法違反(ひき逃げ)と業務上過失致死傷の疑いで逮捕された。飲酒運転の発覚が恐ろしくなって逃げたのだろうか。言語道断である。警察が危険運転致死傷容疑の適用を検討するのは当然だろう。

 一緒に酒を飲み、乗用車に同乗していた男性(19)についても、事実関係を十分調べる必要がある。民事裁判では、ひき逃げ死亡事故を起こした加害者と一緒に飲酒した者も「ほう助に当たる」として先月、損害賠償を命じる判決が出た。周りの者も飲酒運転の制止義務があることを肝に銘じたい。

 飲酒運転による死亡事故は今年上半期、全国で三百六十四件発生し、昨年同期より十三件増えた。危険運転致死傷罪は二〇〇一年の刑法改正で新設され、昨年一月には最高刑が懲役十五年から二十年に引き上げられるなど、罰則が厳しくなった。しかし、その趣旨が生かされず、抑止効果が出ていないのが実情だ。

 同罪の適用要件「正常な運転が困難な状態」の立証が難しいとして、警察や検察が断念するケースも目立つ。事実、〇三年に七十一件だった死亡事故への適用が〇四年は三十八件に減った。捜査を徹底し、抑止につなげてほしい。

 現場のガードレールが、車の衝突に耐えられない強度だったことも明らかになった。歩行者・自転車の転落防止用として、国の設置基準に基づいて設計したというが、万一に備え、被害を最小限に食い止める安全設計を進めたい。

中国社説


ビラ配り無罪判決 行き過ぎ捜査に歯止め
                    '06/8/29

 共産党のビラを配るため東京都内のマンションに無断で立ち入ったとして、住居侵入罪に問われた男性(58)に対し、東京地裁はきのう、無罪(求刑罰金十万円)を言い渡した。平穏にビラを配っただけで逮捕するのは、行き過ぎではないか。判決はそんな素朴な市民感情をくんだ内容である。

 政治的な主張に限らず、迷い犬の捜索やグループ活動の参加者募集など、ビラ配りは自分の意見を手軽に伝える手段の一つである。きちんとした断り書きなどがないマンションでは、郵便受けに入れることにも抵抗感は薄い。

 判決は、犯罪など不法行為が目的ではないのにマンションに昼間、七―八分入ることが「許容されないとの社会的合意はない」と指摘。どのようなときに許されるかは社会通念を基に、立ち入りの目的やマンションの形態などで判断するほかないとした。

 その上で今回のケースを検討。「立ち入り拒否の掲示は商業ビラの配布を禁止する趣旨にも読み取れ、掲示も見えにくい」などから、罪は成立しないと断定した。

 二〇〇四年以降、政治信条を記したビラ配りをめぐる判決はこれまで地裁で二件(有罪と無罪が各一件)、高裁で一件(有罪)あった。憲法の保障する「言論の自由」と、住居侵入という他人の権利の侵害を比べる議論が中心だった。地裁の有罪判決では、罰金十万円に執行猶予二年(求刑罰金十万円)が付いた。罪を二年間犯さなければ罰金を支払わないで済むという珍しい例である。

 これらに比べ今回の判決は、言論の自由に正面から踏み込まなかった点で物足りなさも残る。代わりにマンションの実態や住民生活への影響などを詳しく検討し、安易な捜査に「ノー」の結論を出した。日常生活の視点から独自の見識を示したといえよう。

 気になるのが、起訴された男性は逮捕後二十三日間にわたって拘置され、裁判に一年以上を費やしたことだ。判決後「普通の人間にとって、とてつもなく重い負担だった」と振り返った。大変だったことは容易に想像できる。

 ビラ配りでは二年足らずの間に都内だけで四件が摘発された。国にもの言う姿勢を封じ込めようとの意図が見えるとの批判もある。市民が意見を自由に交換し合う雰囲気が失われないかと心配だ。

 二件の無罪判決は、捜査の無理を浮き彫りにした。控訴は見送るべきである。

中国社説


政党ビラ無罪/自由封じの方が害大きい

 容疑者が逮捕・起訴される事件に、こんなものまでと思わせるものも、まれにだがある。口頭注意で済みそうなのに、仰々しく罪名を着せるケースだ。かえって警察側に意図があるのではと疑われてしまう。

 東京のマンションで、共産党のビラを配った男性が逮捕されたケースも、このたぐいではないか。住居侵入の罪に問われ、罰金十万円を求刑された男性に、東京地裁は無罪を言い渡した。

 共用部分の廊下とはいえ、住人でもない者が勝手にマンションに入り込むのは好ましいこととはいえない。だが、逮捕・起訴されるような事柄だったか。

 昼間に短時間、各戸のドアポストにビラを配布した行為を、判決は「明らかに許されない行為とはいえない」と指摘した。

 住居侵入の罪が成立するためには、住民が立ち入り拒否の意思をはっきり示していなければならない。このケースは、その意思が明確に示されていなかった。

 ビラの内容は議会報告で、静かに、短時間で配布された。不快に感じる居住者がいたかもしれないが、まじめな政党活動を制約したくないと思う人もいただろう。

 判決は、そう指摘した上で「そのことも許さないとする社会的合意はない」との判断を示した。妥当な判決といえる。

 政治信条を書いたビラや機関紙を配って摘発された事件は、二〇〇四年から〇五年にかけて東京都内で四件起きている。

 このうち立川市の自衛隊宿舎で「イラク派兵反対」のビラを配ったとして市民団体の三人が起訴された事件では、一審が無罪、二審が有罪で、判断が割れた。

 共産党の機関紙号外を配ったとして社会保険庁職員が国家公務員法違反の罪に問われた事件は、今年六月の一審判決で猶予つきの罰金刑が言い渡されている。

 ビラは、いずれも自由な意見を表明したものである。他人を威圧し、受け取りを強制したわけでもない。そうした自由も許されないとすれば、息苦しくなるだけだ。「公安警察による言論への威圧効果を狙った」との見方が出るのも当然だろう。

 東京都では、学校での日の丸・君が代強制に反対する教師らの処分が問題になっている。個人の思想・信条にかかわる問題に公権力が踏み込むことには、よほど慎重でなければならない。警察によるビラ配布の摘発は、そうした都の動きと同一線上にあると勘ぐられても仕方ないのではないか。

 ビラ配布で受ける害より、表現の自由やそれに基づく言論活動を封じようとする動きの方が、はるかに害が大きい。

神戸社説


ビラ配布無罪*行き過ぎ摘発を憂える(8月29日)

 政党ビラを配るため東京都内のマンションに立ち入り、住居侵入の罪に問われた男性に、東京地裁が無罪を言い渡した。
 判決は、防犯意識の高まりなどでマンションの廊下など共用部分が「私的な領域」という性格が強くなっているものの、昼間にビラ配布で通路などに短時間立ち入ることが認められないという社会的合意は確立されていないとした。

 加えて、マンションには無断立ち入りを拒否する掲示はあったが、それは商業ビラや有害ビラの配布を対象としたものと読めるとし、男性のビラ配布は住居侵入には当たらないと結論付けた。

 憲法が保障する「表現の自由」と、プライバシーに敏感になってきた住民が衝突する事例が増えている。

 そうした状況の中で、プライバシーを尊重するにしても刑事罰適用には慎重であるべきだ−という判決の考え方は評価できる。

 しかし、こうしたケースは、そもそも逮捕されて長期拘置され、裁判に持ち込まれるべきものかという疑問は消えない。

 男性が立ち入ったマンションは集合ポストは設置されてはいるがオートロックではなく、共同玄関のドアは無施錠だった。宅配ピザなどのチラシが各戸のドアに入っていたことは判決も指摘している。

 男性は廊下からドアのポストに共産党の「都議会報告」や「区議だより」を入れていて110番通報され、住居侵入の現行犯で逮捕された。身柄拘束は二十三日に及んだ。過去にも同様の配布を行っているが見とがめられることはなかった。

 弁護側は、過大な捜査だとして公訴棄却を主張した。しかし判決は手続きに重大な違法性はないとし、捜査のあり方には批判の目を向けていない。

 これには危惧(きぐ)がある。集合住宅で政治的ビラを配布して逮捕されるケースが相次ぎ、長期の拘置後に起訴されているからだ。

 二○○四年には立川市の自衛隊宿舎で「イラク派兵反対」のビラを配った市民運動家三人が逮捕された。一審は無罪だったが、二審で逆転有罪となり、争いが続いている。

 また○五年には都内の警視庁宿舎で政党機関紙を配った厚生労働省職員が逮捕された。

 住民のプライバシー意識は強まっている。それに対する配慮は確かに必要だろう。しかし、捜査当局の対応は、プライバシーを口実に特定の政治的行動を封じ込めようとしているかのようにみえる。

 「表現の自由」の尊重は民主主義の土台である。行き過ぎた摘発がもたらす弊害については、神経質すぎるくらいの注意を払うべきだ。

北海道社説


段々畑はオレンジ色

 三好市池田町白地ウマバの段々畑に、オレンジ色のじゅうたんを敷き詰めたように、採種用ケイトウの花が咲いている=写真。
 栽培農家の話によると、15年ほど前は種苗会社と契約して30軒以上が花や野菜の採種をしていたが、年々高齢化が進み今年は5軒に減った。
 ケイトウは背の低い品種で高さは30センチ余り。6月に苗を植えてから、異なる品種が交じっていないか確かめながら育てる。9月末に種が熟したのを確認して花を切り、乾かして細かい種を集めるという。

段々畑はオレンジ色



被告の男性「表現の自由通じた」 ビラ配布無罪判決
2006年08月28日12時48分

 住民のプライバシーか、表現の自由か――。政党ビラをまくためにマンションに立ち入り、住居侵入罪に問われた被告が28日、無罪とされた。人々のプライバシー意識の高まりに配慮しつつも、判決は、ビラ配布に理解を示した。被告や支援者から喜びの声があがる一方、捜査当局の取り締まりのあり方には課題が投げかけられた。
無罪判決後、ガッツポーズで支持者にこたえる荒川庸生さん=28日午前、東京地裁前で


 「みなさんと戦いとった無罪判決です」。判決言い渡しの後、大勢の支持者らが待ち受ける東京地裁前に、両拳を高々と突き上げて現れた被告の住職、荒川庸生さん(58)には笑みがあふれていた。

 判決後、記者会見に臨んだ荒川さんは「市民感覚に沿って判断してほしいと法廷で訴えてきた。裁判長には敬意を表したい。検察には、これ以上、言論・表現の自由、知る権利を犯罪化しておとしめることはやめてほしい」と語った。

 また、弁護団は、判決について、「憲法が保障する言論の自由の重要性を明確にすることで、『憲法の番人』としての司法の役割が見事果たされた」とする声明を発表した。

 荒川さんによれば、ビラ配布のため葛飾区内の自宅を出たのは、04年12月23日の午後2時ごろ。平和や民主主義についての考え方が重なる共産党を長年支持し、ビラ配布を続けてきた。この日も都議会報告などを300セット、自転車のかごに入れて出発した。

 現場となったマンションの共同玄関はいつも無施錠。7階までエレベーターで上がり、居室のドアポストにビラを入れていった。「集合ポストでは捨てられてしまう。手抜きをせずに住民に届け、ビラを読んでほしかった」

 だが、3階で配布中、住民男性に抗議を受け、通報された。弁護団によれば、110番を受理した際の警視庁の報告書には「共産党?」などの記載があった。

 荒川さんは意見陳述でこう訴えた。「形式的に侵入かどうかを判断するのではなく、表現の自由が危機にさらされていることに思いを致して判断してほしい」。その思いがこの日、通じた。

朝日


飲酒運転 殺人に等しい凶悪犯罪だ

 飲酒運転による痛ましい事故がまたあった。酒を飲んだ上での悲惨な事故が、何度も繰り返されることには、あきれ返るばかりだ。

 まだまだ日本は、社会全体が飲酒運転などに対して、甘いといわざるを得ない。飲酒運転による事故は、殺人に匹敵する凶悪犯罪だということを、強く認識したい。

 25日夜、福岡市東区の海の中道大橋でのひき逃げ、死亡事故は、飲酒運転の乗用車が、会社員一家5人が乗ったレジャー用多目的車(RV)に追突、RVは、橋の欄干を突き破り約15メートル下の海に転落、両親は助かったが幼い兄妹3人が死亡した。

 飲酒運転をしていたのは、福岡市の職員で、事故の直前まで居酒屋やスナックで焼酎、ビールを飲み、19歳の友人を乗せてドライブしていたという。警察の調べでは、現場にブレーキ跡がなく、時速80キロを超す猛スピードで追突したとみられる。

 それにしても、飲酒運転による死亡事故が絶えない。飲酒運転やひき逃げ、速度超過などの無謀運転を防止するため、刑法に危険運転致死傷罪が設けられたのは平成13年12月のことで、最高刑は懲役15年だった。昨年、さらに20年に引き上げられた。

 厳罰化された直後は、飲酒運転などは減少傾向にあったが、最近は増加に転じるなど由々しき事態となっている。飲酒や酒気帯び運転で摘発されるケースには、公務員や警察官も目立っている。飲酒運転は悪質な犯罪だという認識がまだまだ、欠如している証しではないか。

 今後はドライバーだけでなく、飲酒運転することを知りながら、酒を飲ませた店や一緒に飲んだ者も危険運転致死傷罪の共犯として、積極的に検挙していくべきであろう。

 飲酒運転は「悪」という空気を醸成し、「飲んだら運転しない」という当たり前のことを厳守し、徹底させていきたい。また、飲酒運転をしたら免許更新を認めないくらいの厳しい措置も早急に検討したい。

 さらに、危険運転致死傷罪をもっと立件しやすいよう改正することも必要ではないか。現行の法律では「危険運転」を裏付けるための捜査が困難との指摘もあり、これでは何のための法律かわからない。

産経社説


ひき逃げ冤罪 誤った捜査への叱責だ

 ひき逃げ犯人として逮捕され、長期間拘置された男性に無罪判決が下った。ずさんな捜査が市民の人生を取り返しのつかないものにするところだった。捜査当局は誤った捜査の過程を検証すべきだ。

 「一年間、大変なご苦労をおかけしました。理不尽な仕打ちにやり切れない思いはあるでしょう。平穏な生活に戻られることを願います」

 男性が逮捕されてから丸一年。無罪判決を言い渡したあと、裁判官が男性にかけた言葉の重さを捜査当局は厳粛に受け止めてほしい。

 昨年六月に東京都世田谷区内で乗用車を運転中、パトカーに追われてバイクの新聞配達員をはねて重傷を負わせ逃走したという起訴事実は、明確に否定されたのだ。

 検察が前回公判で過ちを認めて無罪の求刑をしており、判決は予想されたことだが、警察、検察の責任は大きい。あらためて反省し、捜査の検証に取り組むべきであろう。

 男性は捜査、公判ともに一貫して具体的なアリバイと無罪を訴えていた。それなのに警察も検察もなぜ過ちを犯したのか。

 捜査上の証拠は男性を犯人にでっち上げた知人ら二人の証言しかなかったが、二人は公判の途中で偽証と認め自分たちの犯行を告白した。男性を逮捕、起訴した根拠はうそだったのである。

 証言を突き崩したのは、公判が進んで有罪の懸念を持った男性の友人が、山中に放置された事故車両を捜し出したことだ。真犯人のうち一人が事故車両の所有者で、当時は無免許運転で盗みも繰り返していた。

 ひき逃げ事件で唯一の物証である事故車両を見つけずに逮捕、起訴をしたのは、捜査のプロとしてお粗末すぎる。男性のアリバイを綿密に裏を取り、知人の証言の信ぴょう性について突き詰めて調べていれば、誤認逮捕は防げた可能性が強い。

 判決も二人の偽証について「慎重な検討が必要であった」と、捜査の落ち度を認め叱責(しっせき)している。安易な見込みと裏付け不足が捜査を誤らせたのではないか。

 最近は秋田の連続児童殺人事件や大阪の女性監禁事件など、不適切な捜査が目立つ。今回の捜査の検証結果を警察白書などで公開し、警察や検察の研修に生かすぐらいでないと意味がない。

 無罪になった男性は「ほっとしたが、捜査を許せない」と憤る。予断と偏見、見込み捜査、長期拘置などは、冤罪(えんざい)を生む共通の土壌だ。市民の訴えに丁寧に耳を傾けてほしい。警察、検察、裁判のすべての過程でより厳しいチェックが求められる。

東京社説


ビラ配り無罪 取り締まりに偏りが

 政党ビラを配り、逮捕・起訴された男性に無罪の判決が出た。いわゆる「左翼」や「反体制」の活動だけに目を光らせては、警察の取り締まりに偏向があると言われてもやむを得ない。

 まるで「ビラを配っただけで有罪」という流れができつつあっただけに、今回の無罪判決はそれにクギを刺したといえる。今後は警察当局により慎重な捜査が求められよう。

 ビラ配布が有罪となった一例目は、昨年十二月。自衛隊宿舎でビラを配った市民団体の三人に、東京高裁が「逆転有罪」を言い渡した。二例目は今年六月で、共産党機関紙などを配った社会保険庁職員が、国家公務員法違反で「罰金十万円・執行猶予二年」という判決を受けた。

 いずれも「イラク派兵反対」や「憲法を守ろう」などという政治的な主張が書かれたビラが対象となっていたため、左翼や「反体制」を旗印にした団体を“ねらい撃ち”にする印象を世間に与えた。

 同様の事件が続いただけに、警察当局による一連の取り締まりは、微罪に形を変えた「言論封じ」ではないかという声まで上がっていた。

 今回の事件も構図は同じだ。二〇〇四年暮れ、男性が東京都葛飾区のマンションに共産党のビラ配布のために立ち入ったとして、住居侵入罪で起訴されたのである。

 だが、男性はこれまで四十年以上にわたってビラを投函(とうかん)し続けていたが、出入りをとがめられたりはしなかったという。滞在時間もせいぜい七、八分程度だった。しかも、商業ビラが集合住宅に配布されるのは日常茶飯事であるし、配布業者がいるのも、公知の事実である。

 東京地裁が「ビラ配布の目的だけであれば、共用部分への立ち入り行為を刑事上の処罰の対象とするという社会通念は、いまだ確立していない」と判断したのは理解できる。

 プライバシーや防犯への意識は高まっているし、住民が平穏に暮らす権利はもちろんある。

 だが、仮にそれを“口実”にして、警察が特定の団体だけを狙い、法を適用したのなら、あまりに政治的に不公平と言わざるを得ない。また、無罪になったとはいえ、この男性が二十三日間も身柄拘束されたことは、取り返しがつかない。

 ビラはお金や組織を持たない人にとって、自分の主張を世間に訴える大切な表現方法である。来年には統一地方選や参院選が控える。むしろ国民が言論・表現の自由を生かし、多様な主張を述べ合うことが民主主義の根っこを強くするはずだ。

東京社説


政党ビラ配り無罪 東京地裁判決

 共産党のビラを配るためにマンションに立ち入ったとして、住居侵入罪に問われた東京都葛飾区の僧侶荒川庸生被告(58)の判決公判が二十八日、東京地裁で開かれた。大島隆明裁判長は「政治目的のビラ配りは社会通念上、禁じられておらず、マンションには明確な立ち入り禁止の表示はなかった。立ち入り行為に正当な理由がなかったとはいえない」と述べ、無罪(求刑罰金十万円)を言い渡した。 

 判決はまず、マンションの共用廊下は「住居」に当たると認定。ビラ配布の目的について「決して不法なものではない」とした。

 その上で、マンションの管理組合理事会で、「葛飾区の広報誌の配布を除き、部外者がマンション内に立ち入ることを禁じる決定をしていた」と認定。しかし実際は訪問販売や商業ビラなどを禁じる趣旨の張り紙しかなく、荒川被告は事前に警告も受けていなかったと認定。

 住民のプライバシー意識や防犯意識の高まりを考慮しても「昼間に各戸のドアポストに投函(とうかん)する目的で通路や階段に短時間立ち入ることが、明らかに許容されずに刑事処罰の対象になる、という社会的合意は確立しているとはいえない」と述べた。

 検察側は、建物には「マンション内に立ち入ってパンフレットの投函、物品販売などを行うことは厳禁」とする張り紙が玄関にあり、立ち入りは容認されていなかったとした上で、「政治的表現行為でも住民の権利を侵害することは許されない」と主張した。

 弁護側は「廊下という共有部分で平穏にビラを投函しただけで、不法侵入で住民のプライバシーを侵害する行為にはあたらない。ビラ配布は政治的表現という正当な目的で行われ、刑事罰が値するような違法性はない」と反論していた。

 弁護側は、民間人による現行犯逮捕自体が手続きとして存在せず、事実無根と主張していたが、判決は「捜査手続きには重大な違法性はない」と弁護側の主張を退けた。

 判決によると、荒川被告は二〇〇四年十二月二十三日午後二時すぎ、葛飾区のマンションで、各戸のドアポストに共産党の「都議会報告」や「区議会だより」を投函。荒川被告は住人に一一〇番通報され、逮捕、起訴された。


東京新聞


誤認逮捕「人質司法」も反省を(8/24)

 「1年間ご苦労をかけました。被った仕打ちにやりきれない思いはあると思います」。ひき逃げ事件で逮捕、起訴されながら、一貫して無実を主張した男性に、無罪を言い渡した裁判官は、そう言葉をかけた。

 パトカーに追われた車が信号無視で交差点に入り二輪車をはねて大ケガをさせたこの事件は、真犯人が知人の男性に罪を着せたウソを、警察、検察が信じ込んだために誤認逮捕・起訴事件になってしまった。

 判決は「被告人を犯人と名指しする供述には慎重な検討が必要」「(真犯人は)本件事故の直後、複数の友人に事故を起こしたことを自認していた」等々、捜査の不行き届きを指摘した。警察、検察は逮捕、起訴までに、どんな関係者の取り調べと裏付け捜査をしたかを検証し、失策を繰り返さないよう猛省が要る。

 同時に再点検が必要なのは起訴後拘置の問題だ。男性は裁判が始まってからも拘置され続け身柄拘束は約10カ月に及んだ。起訴事実の危険運転致傷罪が15年以下の懲役を科す重罪とはいえ、有罪判決までは無罪推定されるべき刑事被告人の扱いとしては、いかにも不当である。

 起訴後の拘置が認められるのは、被告人に「定まった住居がない」場合か「逃亡や証拠隠滅を疑うに足りる相当な理由がある」場合で、2カ月間。延長は原則1回(1カ月)限りだが、裁判所の実際の運用は原則の例外規定を適用し拘置を継続することが多い。一昨年の統計では、身柄拘束されない状態で一審判決を迎えた被告人は3割に満たない。特に起訴事実を否認する被告人は少なくとも初公判まで保釈されないのがなかば常識になっていて、そんな実態は「人質司法」と批判される。

 憂慮されることには、弁護士までが「人質司法」に慣れきった様子がうかがえる。拘置中の被告人のうちどれだけを、弁護士が裁判所に保釈請求したのかをみると、一昨年は25%強しかない。1978年までの9割超から甚だしい低下である。

 裁判員制度で刑事裁判に加わる一般の国民に理解しづらいことが刑事司法の世界で常識になっているのでは困る。誤認逮捕・起訴事件から、刑事司法に携わる関係者がくむべき教訓は多い。

日経社説


飲酒運転をなくすために(8/29)

 また飲酒運転による悲惨な事件が発生した。福岡市で、はしご酒をした後の同市職員に追突された一家5人の車が海に転落し幼い3人が亡くなった。昨年も死傷者8人、同18人という2つの大きな事件が飲酒運転で引き起こされている。

 交通事故死者はここ十数年おおむね減少していて昨年は、最悪だった1970年の1万6700人余から約1万人減り50年前の水準になった。しかし事故件数、負傷者数は30年ほどずっと、自動車の保有台数が増すのに伴い、増加基調にある。

 事故が増えているのに死者が減ったのは、1つには、重大な事故につながる飲酒運転の取り締まりに警察などが力を入れてきたから、と考えられる。60年に道路交通法ができて以来、飲酒運転に対する取り締まり基準と罰則、運転免許にかかわる行政処分は強化を重ねてきた。

 2001年には、飲酒運転による人身事故を、過失犯でなく故意犯とみなす法改正をして刑法の「傷害の罪」に危険運転罪を新設。同罪は施行後3年でさらに厳罰化された。福岡市の事件も「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で走行していた」と分かれば、1年以上の有期(20年まで)懲役を科す危険運転致死罪が適用される。

 警察庁によれば一連の厳罰化が効いて、02年以降飲酒運転の死亡事故は激減し04年には10年前の半数以下まで抑え込むのに成功した。

 ただ厳罰化だけで飲酒運転を撲滅できないのは現実が証明している。交通取り締まりの実施状況と統計結果に照らすと、取り締まり件数の増加・減少と交通事故死者の減少・増加には相関関係がある、とされる。だとすれば、飲酒運転の死亡事故をなくすには、不断の取り締まりが欠かせない。自分が摘発されると不公平感を覚えるものだが、ドライバーも協力しなければならない。

 交通事故の死者は、なお年間6800人以上いる。けが人は100万人を超える。警察庁の世論調査では82%が「深刻な事態。少しでも事故を減らしたい」と受け止めていた。自動車事故を全くなくすのは不可能にしても、故意犯といえる飲酒運転起因の事故は、取り締まりとドライバーの自覚でゼロにできるはずだ。

日経社説


政治ビラ配布 知恵絞り表現の自由守ろう

 東京・葛飾のマンション内で政党のビラを配り、住居侵入罪に問われた僧侶に対し、東京地裁が「違法な行為とは認められない」として無罪を言い渡した。防犯やプライバシー保護の観点から、住民が部外者の共有部分への立ち入りに不安や不快感を募らせていることを考慮する一方、御用聞きや訪問販売が認められてきた歴史なども指摘し、ビラ配りを処罰すべきだとの社会通念までは確立していない、と結論付けている。

 判決は、政治ビラの配布であっても、直ちに表現の自由を保障する憲法21条を根拠に正当化することは困難、とも述べている。集合住宅の住民には共用部分に立ち入った他人による政治的意見の表明を受忍する義務はなく、ポストに入れられたビラの処分を強制される以上、政治目的でも容認されるとは限らない、との理由だ。

 表現の自由と住民のプライバシーのバランスを考慮したのだろうが、表現の自由は基本的人権の中でも民主主義社会を支える根幹であり、最大限に尊重されねばならない。ビラは人々に思想や意見を手軽に伝えることができ、住民運動や動員力、資金力に乏しい団体の政治活動にとっては欠かすことができない情報伝達手段だ。判決は、起訴事実について外形的には住居侵入罪を構成するとした上で、いくつかの理由を掲げて違法性を否定する論法を取っている。表現の自由の重大性や政治活動としてのビラ配りの重要性について真正面から言及していない点では、物足りなさを禁じ得ない。

 それにしても、ビラを配っただけで被告が23日間も拘置されたのは、なぜなのか。被告は1階の集合郵便受けでは他のチラシ類と紛れてしまうと懸念し、各戸のドアポストにビラを投かんしていた。見とがめた住民が110番通報し、急行した警察官が住民の求めに応じて逮捕したという。宅配業者や水道の検針員などを装った強盗、窃盗犯が増えている折、一般的には、他人の住居に立ち入った者が身元を明かさない場合、警察が住居侵入容疑で逮捕するのは無理からぬところだろう。政治ビラを配っていても、偽装工作の可能性を否定しきれないからだ。だが、身元が判明し、立ち入りの目的も違法でないことがはっきりした段階で、直ちに身柄を釈放すべきは言うまでもない。被告の拘置を請求した検察と請求を認めた裁判所の判断に、問題はなかったか。

 判決が指摘するように、最近はオートロックシステムなどで部外者を排除しようとする集合住宅が増えており、共有部分は私的領域としての性格を強めている。ビラを配る側も、プライバシーを重視し犯罪多発に警戒心を強める住民の心情を酌み取りながら、無用な疑念やトラブルが生じないように細心の注意を払わねばならない。住民側も居住者全体の意向や、民主社会におけるビラ配りの必要性をも念頭に入れて、対応が過敏にならないように努めるべきだろう。捜査当局に柔軟さが求められていることは、言うまでもない。

毎日新聞 2006年8月29日 0時17分


ひき逃げ無罪 自由を奪われた10カ月

 ひき逃げ事件の容疑者として誤って逮捕、起訴され、10カ月間も勾留(こうりゅう)された塗装工の藤佐悦寛さん(28)に対し、東京地裁が無罪判決を言い渡した。過去の冤罪の反省が生かされず、ずさんな捜査が繰り返されたことになる。

 事件は昨年6月の未明、東京都世田谷区の路上で起きた。パトカーに追跡された乗用車が、バイクの男性をはねて3カ月の重傷を負わせたまま逃げた。

 その容疑者として、警視庁は藤佐さんを逮捕した。知人2人が、事件の際に彼の運転していた車に同乗していたと供述したからだ。本人は「自分は乗っていなかった」と容疑を否認してアリバイを主張し、物証となる事故車も発見できなかったが、東京地検は起訴した。

 無実が分かったのは、友人の尽力のおかげだ。運転していたのは、逮捕のきっかけとなる供述をした知人で、車は神奈川県の山中に捨てたらしいとの情報をつかみ、自ら事故車を見つけだした。警察の追及に知人2人はうそだったことを認め、起訴されている。

 犯人が罪を他人になすりつけるのは、よく聞く話だ。いくら2人の供述がそろっていても、捜査官ならまず疑ってかかるべきだろう。

 東京地裁の判決によると、知人の1人は事件の直後に事実関係の一部を身近な人たちに漏らしている。たとえアリバイが確認できずとも、この人物の周辺をきちんと捜査していれば、藤佐さんのぬれぎぬは早い段階で明らかになり、10カ月も自由を奪われることはなかった。

 親身になって真実を突き止めた友人がいなかったならどうなっただろうか。あるいは、もし警察や検察の言いなりになって「自白」していたら。有罪判決が下された可能性がきわめて高かったかと思うと背筋が寒くなる。

 判決後、藤佐さんは「早く日常生活に戻りたい。捜査については、無罪判決が出たとはいえ、直ちに許せるものではない」とのコメントを出した。

 3年後に始まる裁判員制度をにらんで、取り調べの録画など刑事司法の改革が進む。その一方で、窃盗や殺人未遂、脅迫などの事件での誤認逮捕が全国で明らかになっている。

 なぜ捜査の基本が守られないのか。警察も検察も、今回の失態を徹底的に検証し、再発を防ぐ手立てを講じるべきだ。それがせめてもの償いだ。

 判決の際、裁判官は「この1年、大変なご苦労をおかけしました。これまで受けた仕打ちに対してはやりきれない思いがあると思います」と語りかけた。

 無実の罪に泣いた被告への思いやりは結構だが、裁判所も無関係ではない。藤佐さんを保釈することなく、10カ月も留め置いた。この事件に限らず自白していない被告の保釈は認められにくい。

 私たちは「長い勾留は自白の無理強いになるのではないか」と指摘してきた。裁判官には、いま一度このことを考えてほしい。


朝日社説


ビラ配り無罪 うなずける判決だ

 マンションの各戸に政党関係のビラを配って回ることが、住居侵入の罪にあたるかどうか。これが争われた裁判で、東京地裁が無罪判決を言い渡した。

 見知らぬ人間が出入りすることに住民が不安を抱く気持ちは分かる。立ち入り禁止を掲示したり、やめるよう言ったりしても効き目がなければ、警察を呼ぶのも手だろう。だが、ビラを配った人がそれで逮捕され、さらに23日間も拘束されるほどのことなのか。

 今回の事件にはそんな驚きと違和感を禁じ得なかった。それだけに、罪にはあたらないとした判決にはうなずける。

 判決によると、被告の住職、荒川庸生さん(58)は、オートロックのないマンションに玄関から入り、最上階から順に各戸のドアのポストにビラを入れて回った。配ったのは共産党の区議団だよりや都議会報告などだった。

 マンションの管理組合は、部外者が共用部分に立ち入ることを禁止していた。1階には「チラシ・パンフレット等広告の投函(とうかん)は固く禁じます」などの張り紙もあった。荒川さんを見つけた住民は、呼び止めて抗議し、警察に引き渡した。

 東京地裁は、次のような考えで無罪と判断した。

 ビラを配るためにマンションの共用部分へ入ることが住居侵入罪になるとは、まだ社会通念にはなっていない。今回の場合、住民側は、政治ビラの配布も含めて立ち入り禁止であるとははっきり表示していなかった。

 もちろん、配る側に節度が必要なのは言うまでもない。腕章など身分を示すものを着けるといった配慮があっていいし、嫌がられるなら1階の集合ポストに入れるしかあるまい。反感を抱かれるようでは元も子もないだろう。

 しかし、そうした節度の問題と、配布していた人をいきなり逮捕して刑事罰を求めることとはまったく別の話だ。

 自衛隊のイラク派遣に反対するビラを防衛庁官舎で配った市民団体のメンバーが逮捕され、75日間も拘束された事件を思い起こさせる。

 この事件は一審で無罪だったが、二審で罰金刑の有罪判決が言い渡され、上告中だ。

 政治ビラなどの表現の自由にかかわる行為をむやみに罰すると、言論自体が萎縮(いしゅく)しかねない。この種の事件が続くとそれが心配だ。

 検察の中には、住居の安全性を重視するのが時代の要請だという考え方があるようだ。しかし、表現の自由は民主主義の基本であり、それを制限することにはよほど慎重でなければならない。

 今回の事件にしても、そもそも荒川さんを拘束し続ける必要があったとは思えない。逃走や証拠隠滅の恐れがあったと言えるのか。住民が迷惑がっていると諭して釈放し、必要があれば任意で事情を聴けば済んだはずだ。

 勾留(こうりゅう)を認めた裁判官も、その妥当性をもう一度振り返ってもらいたい。

朝日社説


政党ビラの配布 無罪 住居侵入にあたらず
目的・様態 “社会通念上は正当”
                2006年8月29日(火)「しんぶん赤旗」

 東京都葛飾区のマンションで日本共産党の都議会報告などのビラを配った荒川庸生(ようせい)さん(58)が、住居侵入罪で不当に起訴された弾圧事件の判決公判が二十八日、東京地裁で開かれました。大島隆明裁判長は、「社会通念上、本件のようなビラ配布は禁じられておらず、正当な理由がないとは言えない」とのべ、荒川さんに対し無罪(求刑罰金十万円)を言い渡しました。憲法で認められたビラ配布の自由の正当性を認め、違法捜査をもって言論・表現の自由を妨害した警備公安警察・検察のあり方を厳しく問うものです。

 判決後、荒川さんは弁護団と記者会見し、「常識的な判決に敬意を表したい。検察にはこれ以上言論・表現の自由を犯罪におとしめることはやめてほしい」と述べました。

 判決は、マンション廊下を「住居」にあたると判断。そのうえで、ビラ配布について「目的が決して不法なものではない」と認定。共同住宅への立ち入りは、共同住宅の形態、立ち入りの目的・様態などにてらし、社会通念上容認されるか否かによって違法性は判断されるという基準を示しました。

 荒川さんの行為は、昼間の時間帯に、誰にもとがめられることなく、鍵のかかっていないマンションの共用部分に短時間立ち入っただけと認定。ビラの内容も、住民がプライバシーを侵害されるという不安を抱くことも少ないとし、「住居侵入罪を構成する違法行為とは認められない」としました。

 弁護側は公判で、「マンション住人による現行犯逮捕」は存在せず、事後的ねつ造によるもので、単なるビラの投函(とうかん)に、家宅捜索などの過大で恣意(しい)的な捜査を行うなど、違法捜査の上に立件された事件だと主張。「過大で違法な捜査であり憲法違反」であるとして公訴棄却を求めてきました。その点について、判決は違法性を認めませんでした。


無罪は当然 控訴断念を 市田書記局長が会見
            2006年8月29日(火)「しんぶん赤旗」

 日本共産党の市田忠義書記局長は二十八日、国会内で記者会見し、東京・葛飾区内のマンションに日本共産党のビラを配布したことが住居侵入にあたるとして起訴された荒川庸生氏に東京地裁が無罪判決を言い渡したことについて、「マンションに政党のビラを配布することは、『表現の自由』を定めた憲法二一条で認められた国民の当然の権利だ。住居侵入にあたらないとして無罪判決をくだしたのは当然だ」とのべました。

 市田氏は「そもそも、こうした国民の当然の権利に対して、住居侵入などとして逮捕した警察と、起訴した検察当局に、わが党としてあらためて強く抗議の意思を表明したい」と強調。「東京地検が控訴を断念することを強く求めたい」とのべました。

 また、「国民の表現の自由を守るために、自ら奮闘した荒川氏と、裁判を支援した弁護団、葛飾区民、このたたかいに支援を寄せた全国の人々に心から敬意を表したい」とのべました。

 市田氏は「安心してビラも配布できないような、国民の権利への弾圧が強まっているもとで、こうした判決を勝ち取ることができたのは、たいへん意味があることだ」とのべました。


表現の自由 芽吹いてきた 荒川庸生さんの話
                 2006年8月29日(火)「しんぶん赤旗」

 憲法で保障された重要な権利が、ここしばらくないがしろにされ、有罪という判決が続きましたが、この八月二十八日、無罪を勝ち取れたことは、この国の民主主義や言論・表現の自由がまた芽吹いてきた日だと確信しています。

 私は公判のなかで、市民感覚に立って判断していただきたいと申し上げてきました。私は、マンションの開放廊下に静かに入ってポスティングすることが犯罪であるとの認識はまったくありませんでした。これが一般市民常識だと思います。

 二十三日間の勾留、一年半に及ぶ裁判は、普通の人間にとって、とてつもなく重い負担です。私への求刑は罰金十万円でしたが、支払わなければならなかった損害は、ことばでは表せません。表現の自由にたいする弾圧事件は、警察、とくに公安警察はやめていただきたい。

 無罪を確定させるためにも、控訴を許さない。私も頑張ります。みなさんも、お力を貸してください。


言論の自由、社会常識の勝利
  主張 葛飾ビラ弾圧判決
                 2006年8月29日(火)「しんぶん赤旗」

 東京都葛飾区内のマンションに日本共産党の都議会報告などを配布した党後援会員・荒川庸生氏が住居侵入罪で不当に逮捕・起訴された葛飾マンションビラ配布事件で、東京地裁が無罪判決を出しました。

 政治的言論の締め付けをねらう一連の事件で弾圧を追認する不当判決が続いたなかで、司法が自由と人権を踏みにじる政治弾圧に加担するのでなく「『憲法の番人』としての司法の役割が見事に果たされた」(弁護団声明)、重要な勝利判決といえます。


ビラ配布は犯罪でない

 「この日は、民主主義、言論表現の自由がまた芽吹き始めた日です」―判決直後の集会で晴れやかにこう語った荒川氏を、支援者の大きな拍手が包みました。

 荒川氏がおこなったことは、休日の午後に、自由に出入りもできる民間分譲マンションで、共用廊下を平穏に歩き、各戸のポストにビラを配布したというだけです。

 日本国憲法第二一条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」としています。戦前の明治憲法が「法律の範囲内」でしか言論の自由を認めず、治安維持法などの弾圧立法で言論の自由を侵したことへの反省からです。

 だれもが自由にものを言え、だれもが自由にそれを取捨選択できることは、民主主義社会の根幹です。なかでもビラを配ることは、だれでもできるもっとも気軽な表現行為です。それを受け取る人の「知る権利」を含め、ビラ配布の権利はもっとも強く保障されるべきものです。

 憲法が認める言論表現の自由を正面から否定することはさすがにできない警察、検察権力は、荒川氏の市民として当たり前の行為を住居侵入罪という別個の犯罪にしたてあげようとしました。なんとしてもビラ配布を有罪にし、裁判所に「違法行為」と認めさせることがねらいでした。それによって全国で無数におこなわれている同様のビラ配布にまで有形無形の圧力をかけ、言論を委縮させることをたくらむ、徹頭徹尾政治的な言論弾圧だったのです。

 しかし判決は、このたくらみを退けました。ビラ配布のためのマンションへの立ち入りには「正当な理由」があると認定し、違法性についてはマンションの形態や個々の事例に応じて「社会通念を基準」に判断されるべきだとしました。荒川氏については、「住居侵入罪を構成する違法な行為であるとは認められない」として、そのビラ配布が犯罪行為ではないことを明確に認めたのです。

 言論表現の自由を否定し、住居侵入の罪を非常識なまでに拡張解釈して荒川氏を罪におとしいれようとした警察、検察のねらいを許さなかった判決は、憲法の掲げる基本的人権に合致し、社会の常識に沿ったものであるだけに強い力をもちます。検察は控訴せずに判決に服し、荒川氏の無罪を確定させるべきです。


権利を確立するたたかい

 葛飾事件のほかにも、大分県豊後高田市の日本共産党・大石忠昭市議の事件、国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法事件などビラ配布をめぐり不当に起訴された重要な事件が各地で同時にたたかわれています。

 ビラ配布にたいする弾圧は、国政や地方政治の民主的改革を願う国民の要求と運動を抑えつけようとする攻撃にほかなりません。

 葛飾事件に続き、すべての裁判に勝利し、国民の要求と運動を発展させるための言論表現の自由と権利を確立するたたかいを、全国で広げましょう。




“守られた民主主義” 逮捕・起訴自体が不当
    新しい日始まった 荒川さん夫妻
                 2006年8月29日(火)「しんぶん赤旗」

 「言論と表現の自由の新しい日が始まった。勝利をみなさんと喜びたい」。二十八日、東京・葛飾のビラ配布弾圧事件無罪判決後、東京地裁前で荒川庸生さん(58)が語ると集まった支援者らは笑顔を見せうれしさをにじませました。



“控訴やめて”

 「被告人は無罪」。大島隆明裁判長が主文を読み上げると傍聴席からは拍手と歓声が上がりました。けさ姿で左手に数珠を持った僧侶の荒川さんは、裁判長に一礼。被告人席に戻り判決理由を聞きながら白いハンカチでほおをぬぐいました。傍聴席最前列の中央左寄りに座った妻の英子さん(48)は目をうるませました。「支援してくださった皆さんのおかげで勝ちました。うれしい」。判決後英子さんは、支援者らに感謝の気持ちを表しました。

 事件発生後、家族の平穏な生活は一変。仕事をしながらほぼ月一回のペースで行われる公判をこなす夫を支えました。守る会結成のために駆けまわりました。

 「なぜビラを配っただけで罪になるのか」との疑問を抱えつづけました。二十四日、英子さんは二十三歳の長男とともに裁判長に手紙を出します。「無罪判決を信じています」

 傍聴席で判決を待つ間、最近のビラ配布事件の判決を考え「不当判決」しか頭に浮かんでこなかったといいます。「現在の社会状況のなかで裁判長は勇気ある判決を書いてくれました。検察は控訴しないでほしい」と英子さんは話しました。



支援者ら喜び爆発

 荒川さんの無罪を求めてきた市民や宗教者など支援者らは判決に喜びを爆発させました。

 弁護士が「無罪」と書かれた、垂れ幕を広げると、傍聴席に入れず外で待機していた約二百人の支援者らは「おー」とうなるような歓声を上げました。

 判決言い渡し後、東京地裁を出てきた荒川さんを支援者は拍手で出迎えました。荒川さんは両手を空に突き上げ、ガッツポーズでこたえました。

 「荒川さんは(日本共産党の)『都議会報告』を配布して裁かれたので、私も証言台に立ちました。それだけに本当にうれしい」というのは、地元・葛飾区在住の木村陽治元都議団長。「都民の暮らしにとって、いかに『報告』がかけがえのないものかを証言しただけに、この無罪判決は荒川さんだけでなく、党都議団にとっての判決でもあるんです」。渡辺康信党都議団長は「新しい民主主義の芽生えだと思う。控訴させないようにみなさんと一緒に頑張っていきたい」とあいさつしました。

 神戸市から駆けつけた臨済宗妙心寺派尼僧は「宗教活動でも『教え』を広げるためビラを配布するので今回の逮捕には驚いた。判決が社会通念上無罪としたのは当然だと思う。民主主義が守られた」と語りました。

 千葉県船橋市の女性(69)は「うれしい。私はクリスチャンですが、宗教者として弱い人たちのために頑張っている人の言い分が認められた」と話しました。

 判決報告集会で支援者らは、「控訴しないよう求めていく」ことを確認しました。



解説

市民感情にそった判決
憲法判断には踏み込まず

 「一市民が日中、静かにビラを投かんしたことがなぜ犯罪になるのか」―。荒川さんの無罪判決は、こうした市民感情にそった判決であり当然です。判決は、国公法違反を問われた堀越事件や、公選法違反の大石事件など、言論・表現の自由をめぐる不当判決が続いているなかで、一定の良識を示したものといえます。

 ビラ配布は憲法で認められた言論・表現の自由、政治的自由に基づく活動です。もともと逮捕、起訴すること自体が不当であり、日本共産党の活動妨害を狙った弾圧であることが明白な事件でした。

 ビラをポストに入れるポスティングという社会的に当たり前の活動を、家宅捜索などの過大な違法捜査で、いかにも住民生活の平穏を乱す犯罪的な行為であるように描こうとする警察・検察側こそ憲法に照らして断罪されるべきで、控訴で裁判を長引かせることは決して許されません。

 一方で不十分な問題点も指摘しないわけにはいきません。

 荒川さんが配布したビラは日本共産党の都議会報告や区民アンケートであり、憲法二一条一項の保障する政治的表現活動の一つであり、民主主義の根幹をなすものです。荒川さんも公判で「有罪になるようなことがあれば、何も言えない世の中になってしまう」と訴え続けてきました。

 公安警察・検察が狙ったのはまさに、政治的市民活動の委縮効果であり、憲法を踏みにじるものでした。裁判所は、こうした当然ふれるべき憲法判断にはまったく踏み込みませんでした。

 さらに公判では住民の一一〇番通報をうけた警視庁通信指令本部が「共産党員?がビラのようなもの投げ込み」などと、管轄する警察署に注意を喚起する「重要ブザー」を押すなど、最初から日本共産党の活動妨害を目的にした違法捜査だったことが明らかになりました。判決は、言論弾圧のためには手段を選ばないという公安警察・検察の姿勢にもまったく言及しませんでした。

 自由と人権を踏みにじる政治弾圧を二度と繰り返させないために、引き続く警備公安警察・検察への追及を強めていく必要があります。(阿曽 隆)


国民救援会が会長声明

 日本国民救援会中央本部(山田善二郎会長)は二十八日、「葛飾ビラ配布弾圧事件の無罪判決についての会長声明」を発表しました。

 声明は、一連のビラ弾圧事件で有罪判決が続き、「『戦争をする国』づくりに反対する言論・表現活動への抑圧が強まる中で、ビラ配布の自由を認めた今回の無罪判決は画期的なもの」と指摘するとともに、署名や要請手紙など広範な支援の広がりに言及。

 そのうえで、「東京地方検察庁が今回の無罪判決を重く受けとめ、本件の控訴を直ちに断念し、今後二度とこのような言論・表現活動に対して弾圧することがないよう強く求め」ています。


葛飾ビラ配布弾圧事件 28日に判決
     刑罰適用は憲法違反
     静かにポストに投函しただけ
                 2006年8月26日(土)「しんぶん赤旗」

 東京都葛飾区のマンションで日本共産党の都議会報告などのビラを配った荒川庸生さん(58)が、住居侵入罪で不当に起訴された弾圧事件は、二十八日に東京地裁で判決公判を迎えます。十四回にわたった公判では、同事件が日本共産党の政治活動を狙った憲法違反の弾圧であることが浮き彫りになりました。(阿曽 隆)


 荒川さんは二〇〇四年十二月、葛飾区のマンションに日本共産党の都議会報告、区議団だより、アンケート用紙と返信封筒を配布しました。ビラ配布という憲法で保障された言論・表現の自由、政治活動の自由の行使を、東京地検は「住居侵入」だと言いがかりをつけ起訴したのです。

 しかし荒川さんは、平日の日中、マンションの正面玄関から入り、一人で静かにドアポストにビラを投函(とうかん)しただけ。物理的に閉ざされていない廊下などの共用部分に入っただけで、住居侵入罪にあたらないことは常識からみても明らかです。

 これに対して警察が行った捜査は異常なものでした。

 公判では、住民の一一〇番通報を受けた警視庁通信指令本部の貝原大介巡査長が出廷。一一〇番聴取のためのモニターに「共産党員?がビラのようなもの投げ込み」などと記し、管轄する警察署に注意を喚起する「重要ブザー」を押した、と証言しました。その結果、現場には八人以上もの警官が駆けつけ、亀有署の刑事・組織犯罪対策課の課長と同代理、警備課の公安係も含まれていたことが明らかになりました。マンションの実況見分も警視庁公安部が指揮しました。

 立命館大学法科大学院の松宮孝明(刑法)、市川正人(憲法)両教授が証人出廷。荒川さんのビラ配布は住居などへの「侵入」にはあたらず、刑罰を適用することは憲法違反になると証言しました。



荒川庸生さんに聞く

表現の自由守るため絶対に負けられない
 判決を前に荒川庸生さんに思いを聞きました。


 不当に逮捕され、二十三日間もの長い間勾留されました。先の見えない不安の中、接見した弁護士さんから、ガラス越しに「しんぶん赤旗」に載った記事を見せられました。妻が集会で支援の方たちに寄せたメッセージでした。

 「夫はこの弾圧は個人を超えた事件であり、今後の歴史の流れを左右する重大な問題であることを認識し、自らその渦中に身を置きたたかっています」

 これが私のたたかいの原点です。

 こうした家族・友人・地域の仲間や全国のみなさんの運動に支えられてここまで頑張ってくることができました。

 この間、反戦ビラをまいたことで逮捕されたり、「日の丸・君が代」に反対して教師が処分されるなど、民主主義や表現の自由に対する一連の攻撃が続きました。

 憲法に高らかにうたわれている平和と民主主義、基本的人権がないがしろにされ、言論・表現の自由が露骨に妨害されることを目の当たりにして、こうした流れが憲法や教育基本法などの改悪につながることに不安を感じます。

 だからこそ、知る権利、伝える権利としての大切な手段であるビラの投函(とうかん)行為を絶対に犯罪にしてはなりません。負けられない裁判です。

 宗教者として農協運動に携わってきた厳格な父のもとで育った私は、社会の不正義や不平等への怒り、困っている人へのいたわりや命を尊び、平和を愛する思いが思想形成の基盤となり、当然の帰結として日本共産党を支持するようになりました。平和な世の中で、だれもが平等に人生をまっとうできる社会は、日本共産党の政策でこそと信じたからです。

 この国に再びものをいえぬ暗闇をもたらすのか、言論・表現の自由を守るかの岐路を決する重要な裁判です。裁判所には公正な判断を心から願いたい。


言論表現の自由を守るために ビラ配布4裁判に大きな支援を
                  2006年8月25日(金)「しんぶん赤旗」

 ビラの配布という市民の日常の当たり前の行為が不当にも起訴され裁判となっている四つの事件が、現在きわめて重要な局面を迎えています。

 二〇〇三年いっせい地方選挙で大分県豊後高田市の日本共産党・大石忠昭市議が、告示前に後援会ニュースを配布したことを戸別訪問、文書違反、事前運動として起訴された大石事件で、大分地裁が今年一月、罰金十五万円、公民権停止三年の不当判決を出しました。

 「選挙の自由をひろげ大石さんを守る会」は七月に開始された控訴審で、さらに公正裁判を要求する署名を大きく集中することなど、世論と運動を広げるために奮闘しています。

 国公法弾圧堀越事件と世田谷国公法事件は、目黒社会保険事務所勤務の堀越明男さんが〇三年十、十一月、厚生労働省勤務の宇治橋眞一さんが〇五年九月、いずれも休日、居住地や職場から遠く離れた場所で職務と無関係に、「しんぶん赤旗」号外などを集合ポスト等に投函(とうかん)したことが、国家公務員法・人事院規則の政治活動の制限違反として起訴されたものです。

 堀越事件は、警視庁公安部主導の大がかりな尾行など捜査の違法性や、国公法は憲法、国際自由権規約に違反、職務の公正な執行を侵害しておらず罰するに値しないなどを論証しましたが、六月に有罪判決が出されました。有罪の理由は、勤務時間外でも公務員の政治活動を少しでも認めれば、それが累積して「行政の中立的運営に対する国民の信頼を損なう」という時代錯誤のものでした。ところが、罰金十万円に執行猶予二年という異例の判決で、有罪の理屈がいかに根拠がないかを自認、ここに弁護側の立証と支援運動の成果が表れています。弁護団と「国公法弾圧を許さず、言論表現の自由を守る会」は、控訴審で一審判決を全面的に打ち破るためにとりくみをいっそう強化することにしています。

 世田谷国公法事件の公判では、住居侵入で逮捕しながら国公法違反で起訴したことに対し、集合住宅の郵便受けへのビラの投函という、もともと住居侵入に当たらない行為で逮捕して集めた証拠をもとに、国家公務員だからと国公法違反で起訴したことの不当性、国公法が憲法と国際自由権規約に違反することを立証するために全力をあげています。

 さらに、葛飾マンションビラ配布事件は、〇四年十二月、葛飾区の後援会員・荒川庸生氏が開放型マンションの各戸郵便受けに日本共産党の葛飾区議団だよりなどを配布したことを住居侵入だとして起訴されたもので、東京地裁の判決が二十八日に言い渡されます。マンションの郵便受けに政党の政策や活動を知らせるビラの配布は、何よりも憲法の保障する言論・表現、政治活動の自由として最大限に尊重されなければなりません。「葛飾・ビラ配布の自由を守る会」は裁判勝利をめざす7・19総決起集会を成功させ、わが国に基本的人権を根づかせようと運動を強めています。

 ビラ配布に対する弾圧は、国政や地方政治の民主的改革を願う国民の要求と運動を抑えつけようとする攻撃にほかなりません。ビラ配布四裁判に勝利することは、私たちの要求と運動を発展させるための言論表現の自由と権利を確立するたたかいです。

 国民救援会などで、これら言論弾圧四事件のネットワークづくりの努力もすすめられ、各地で新たな支援の輪が広がっています。いまこそ、憲法改悪の動きを打ち破り、わが国に言論表現の自由、選挙・政治活動の自由、公務員の市民的政治的自由を確立するたたかいとして、国民的な世論と運動を発展させようではありませんか。(日本共産党法規対策部 岡田光司)



葛飾ビラ弾圧 無罪判決求める最終弁論し結審
                 2006年7月11日(火)「しんぶん赤旗」

 東京・葛飾区のマンションで日本共産党の区議団だよりなどのビラを配った荒川庸生さん(58)が、住居侵入罪で不当に起訴されている弾圧事件の第十四回公判が十日、東京地裁(大島隆明裁判長)で開かれ、弁護側が最終弁論、結審しました。

 弁護団は荒川さんの無罪を主張。荒川さん本人が意見陳述で「この国に再びもの言えぬ暗闇をもたらすのか、言論・表現を守るのかの岐路を決する裁判です。裁判所は勇気ある判断をお願いします」と訴えました。

 弁護団は、(1)「マンション住人による現行犯逮捕」は存在せず、事後的ねつ造によるもの(2)逮捕事実や黙秘権の告知を欠いているまま、事実上の取り調べを開始するなどの手続き上の違法(3)単なるビラ投函に、家宅捜索などの過大で恣意(しい)的な捜査を行うなど、違法捜査の上に立件された事件だと指摘。「この違法性は憲法違反であり軽微なものではなく、違法捜査に依拠した公訴提起は、検察の訴追裁量の逸脱」だと批判。「将来において同様な違法捜査およびそれに基づく人権侵害行為が行われないよう警鐘をならすために、公訴棄却がなされるべき」と主張しました。

 弁護団は、荒川さんが配布した「都議会報告」や「区議団だより」などが、住民の「知る権利」に奉仕し議会制民主主義の基礎になる活動であることを明らかにし、「政治的言論の自由として憲法二一条一項の保障を受ける正当なもの」と主張しました。またその手段は、「白昼に一人で常時施錠されていない正面玄関から入り、静かにドアポストに投函した」という正当なものであり、「ポスティングによって、プライバシーの侵害など住民の権利を不当に侵害した」などとする検察側の主張を「まったく的外れ」と批判しました。判決公判は八月二十八日です。



葛飾ビラ弾圧事件公判 罰金10万円を求刑
                    2006年6月24日(土)「しんぶん赤旗」

 東京都葛飾区のマンションで日本共産党の区議団だよりなどのビラを配った荒川庸生さん(58)が、住居侵入罪で不当に起訴されている弾圧事件の第十三回公判が二十三日、東京地裁(大島隆明裁判長)で開かれ、検察側は荒川さんに対し罰金十万円を求刑しました。

 検察側は、マンションの玄関ホールにパンフレットの投函(とうかん)等を禁止する旨の張り紙があったとして、「関係者以外の立ち入り拒否の明示をしていた」などと主張。日中、静かにビラを投函していたにすぎない荒川さんの行為を、「態様は軽微とは言えず悪質」「プライバシーの侵害の程度は軽微でない」などと述べ、さも悪質な行為のように描こうとしました。

 しかし、ビラを投函したことで住民のプライバシーがどう不当に侵害されたのかなど具体的な点についてはまったく説明しませんでした。

 公判後、葛飾ビラ弾圧事件の中村欧介主任弁護人は「検察の主張は、荒川さんが不当にマンション住民の利益を侵害したという根拠が述べられたとはいえない内容。しかもマンションの管理状況について関係者以外の出入りを厳しく制限していたなどとするなど、多くの事実歪曲(わいきょく)がある。最終弁論できちんと反論していくが無罪を確信している」と語りました。



「侵入に当たらず」  葛飾ビラ弾圧 刑法学者ら証言
                         2006年5月20日(土)「しんぶん赤旗」

 東京・葛飾区のマンションで日本共産党の都議会報告などのビラを配った荒川庸生さんが、住居侵入罪で不当に起訴されている弾圧事件の第十一回公判が十九日、東京地裁であり、弁護側証人として憲法と刑法の学者が出廷しました。荒川さんのビラ配布は住居などへの「侵入」には当たらず、刑罰を適用することは憲法違反になると証言しました。

 立命館大学法科大学院の松宮孝明教授(刑法)は、「侵入」とは住居権者の意思に反する立ち入り(住居権の侵害)だが、荒川さんが立ち入った廊下などの共用部分は、住民みんなで使うものであり、「住居権者の意思」は住民たちの「総意」になると指摘。(1)オートロックなどの物理的な障壁が設けられている場合は立ち入りを拒絶する住居権者の「総意」が明示されていると解釈できるが、「立ち入り禁止」の張り紙だけではすぐに「総意」の明示とはいえない(2)しかし拒絶の総意が明示されていなくても、夜間に立ち入るなど市民の常識で見て不穏な態様や目的で立ち入った場合は住居権者(住民)の総意に反した「侵入」になる――と解説しました。

 その上で、荒川さんのように合法的なビラを平穏に配布するために、物理的に閉ざされていない共用部分に立ち入るのは、明示された住民の総意に反したわけでも、「不穏」に立ち入ったわけではなく、「侵入にあたらない」と証言しました。

 立命館大学法科大学院の市川正人教授(憲法)は、平穏なビラ配布は弊害が少なく、ビラ配布のための共用部分への立ち入りを規制して得られる利益に比べて、刑罰で禁止されることで重要な表現手段が行使できなくなる深刻さ、表現の自由の重要性は大きいと証言。荒川さんの立ち入りに住居侵入罪を適用し処罰するのは「憲法違反になる」と証言しました。


ビラの役割を証言 東京・葛飾弾圧事件 弁護側立証始まる
                 2006年3月10日(金)「しんぶん赤旗」

 東京・葛飾区のマンションで日本共産党の区議団だよりなどのビラを配った荒川庸生さん(58)が、住居侵入罪で不当に起訴されている弾圧事件の第九回公判が九日、東京地裁(大島隆明裁判長)であり、無罪を求める弁護側の立証がはじまりました。逮捕当時に日本共産党都議団長だった木村陽治氏と同葛飾区議団長だった高橋信夫氏が、荒川さんが配布した党都議団の「都議会報告」、「区議団だより」と区民アンケートの意義を証言しました。

 木村氏は都議会報告について、「都民に選ばれた都議は、議員活動を都民に知らせる責務がある。ビラは都政と都民をつなぐパイプであり、都政・都議会の問題点、議論を都民に知ってもらうにはビラの発行はどうしても必要」と証言しました。

 高橋氏も区議団だよりの役割について、「議員は仕事を報告する義務・責任があり、区民も議員が住民の立場で働いているか、声を反映しているか、行政をチェックしているか、活動をチェックすることができる」と証言。区民アンケートには七百通を超える回答があり、「ビラとアンケートは議員と地域住民を結び、住民の声を議会に届けるホットライン。民主主義の学校といわれる地方自治の血流の役割を持っている。それが弾圧されることに怒りを持っている」とのべました。

 公判には、荒川さんの逮捕の際に弁解録取書を作成した亀有署刑事・組織犯罪対策課の北山新一警部補・係長(当時)も証人として出廷。荒川さんが長時間の事情聴取をされた後、帰宅を申し出てはじめて「逮捕されている」と告げられたと証言していることに反して、「逮捕は(弁解聴取前に)告げた」とし、「(聴取中、荒川さんが)ビラや封筒を持っていたが、とりあげずに聴取を続けていた」などと不自然な証言をしました。


葛飾ビラ弾圧 言論抹殺目的の起訴
       第8回公判 弁護側が公訴棄却要求
                 2006年1月27日(金)「しんぶん赤旗」

 東京・葛飾区のマンションで日本共産党の区議会だよりなどのビラを配った荒川庸生さん(58)が、住居侵入罪で不当に起訴されている弾圧事件の第八回公判が二十六日、東京地裁であり、弁護側が冒頭陳述を行い公訴棄却を主張しました。

 弁護側は、この事件が日本共産党のビラ配布を弾圧するために、犯罪にならない行為をあえて起訴したものと指摘。「政治的言論を抹殺しようとする恣意(しい)的な起訴」「重大な訴追裁量の逸脱」と検察側を批判しました。

 とくに「私人(マンション住民)による現行犯逮捕」とされた捜査手続きについて、「住民は荒川さんに対し、一階共同玄関ホールで待たせており、住民によって逮捕されたと認められる状況はいっさい存在しなかった」と主張。「もともと存在していない私人による現行犯逮捕手続きの事後的ねつ造にほかならない」と批判しました。

 さらに弁護側は、マンションには関係者以外の立ち入りを拒否する旨を明示する告知もなく、ビラの配布を目的にした立ち入りが日常的に許容されていた事実を示し、「本件で住居侵入罪が成立する余地はない」と指摘。「配布行為は政治的言論の自由として憲法二一条一項の保障をうけるもの」とのべました。

 公判では、捜査段階での供述について荒川さんの本人尋問も行われました。

 弁護側が、警察に110番通報した住民や、その後駆けつけた亀有署の警察官らによって、腕を拘束されたりしたかなどと尋問。荒川さんは、「拘束はありませんでした」「午後五時ごろ、民間人によって逮捕されていると告げられるまで、被疑者という認識は全くありませんでした。それまでは黙秘権も弁護人を選定できることも警察官から告げられていません」と証言。改めて公訴事実を否定しました。




日常的に商業チラシ 葛飾ビラ弾圧公判で管理人
                    2005年10月4日(火)「しんぶん赤旗」

 東京・葛飾区のマンションで日本共産党の区議会だよりなどのビラを配った男性が、住居侵入罪で不当に逮捕・起訴された弾圧事件で三日、東京地裁(大島隆明裁判長)で第五回公判が開かれました。マンション管理会社から派遣された管理人の男性が検察側証人として出廷、商業チラシなどが日常的に配布されていると証言しました。

 最初の検察側尋問で管理人は、同マンションでは区の広報を除いて一切のビラ、チラシの配布を禁じていると証言。外部の人が立ち入ろうとした場合は「投かん禁止であることを伝え、帰ってもらっている」などと話しました。

 しかし、その後の弁護側尋問で、不動産売買やピザ店などのチラシが「毎日のように」集合ポストに投かんされていたことを証言。管理人業務にはエレベーターホールや二―七階の廊下の清掃も含まれ、その間はマンション玄関の管理人室を離れると話しました。

 また、管理人が勤務していない水、土曜日の午後や夜間は施錠もしておらず、その間の部外者の出入りについて「認識していません」と答えました。

 再尋問に立った検察側は、事件直後の〇四年十二月三十日、セールスに入ってきた男性を管理人が注意したことについて「なぜ警察に通報しなかったか」と質問。管理人は「注意したら出て行ったから。出て行ってくれれば問題ありません」と答えました。

 大島裁判長は、区の広報以外は配布禁止とした証言について質問。選挙公報や法定ビラも受け付けていないのか、と問いました。管理人は「重要だと私が思える場合は預かって、管理組合の許可を得て配布する」と回答。今回の選挙でそういうことがあったか、と重ねて問われ「ありません」と答えました。



「現行犯逮捕」は不成立
    葛飾ビラ弾圧事件 110番通報者証言で判明  東京地裁

 東京・葛飾区のマンションで日本共産党の区議会だよりなどのビラを配った男性が、住居侵入罪で不当に起訴されている弾圧事件の第六回公判が十四日、東京地裁(大島隆明裁判長)であり、男性のビラ配布をみとがめて一一〇番通報し、「現行犯逮捕」したとするマンション住人の男性が証人出廷しました。

 住人は「逮捕」時の状況について、「物理的な拘束はしていない。目の前にいれば拘束になる」などと独自の見解をのべたうえで、一一〇番通報後に男性を先にマンション入り口に行かせて、数分間離れたにもかかわらず「逮捕した」などとのべました。警察・検察主張の「現行犯逮捕」がそもそも成立していないことがはっきりしました。

 住人は、男性が「迷惑であれば配りませんので、部屋番号を教えてください」と話したことについては「覚えていない」などと証言しました。

 ドアポストにビラが入る音を聞いてから、一一〇番通報までは「五分ぐらい」だったとし、通報で「ガラ(身柄)は押さえた」「PC(パトカーのこと)を回してくれ」などといったのは「警察の人の話を聞いて知っていた」などとのべ、くわしくは証言しませんでした。

 この住人は、過去にドアポストにチラシが入っていたため、日本共産党やピザ店に電話で抗議したものの、その際「マンション(名)は告げていない」などとのべました。

 この住人は、防犯対策やビラ配布について管理組合・理事会でされていた議論は「知らない」、防犯対策などで管理組合に提案したり、議論したり「する気もなかった」などとのべました。尋問では、この住人が、管理組合の理事在任中も理事会に出席したことはなく、消防点検を居住者でただ一人拒否していたことも明らかにされました。

 同公判には、男性を支援する京都、大阪、兵庫などの宗教者平和協議会から宗教者約十人が傍聴にかけつけ、男性を激励しました。


東京・葛飾の事件
  表現の自由の優越性 裁判も認めたのに
  ビラ配布逮捕  この不当
                2005年1月8日(土)「しんぶん赤旗」



 東京・葛飾区のマンションで日本共産党のビラを配布していた男性が昨年十二月に不当逮捕され、現在も勾留されている事件が「一政党の問題ではない」(市民団体)と注目を集めています。「『明日はわが身』の危険はないのか」(四日付「東京」)とも報道されています。あらためて事件を振り返ると――。



 男性がビラを配布したマンションは葛飾区のJR亀有駅から徒歩八分ほどの道路沿い。七階建てで、オートロックはなく、かなりの出入りがあります。マンション内にはビラにかかわる掲示が集合ポストのわきにあり、管理組合名で「チラシ・パンフレット等広告の投函(とうかん)」を禁じています。この掲示にかかわらず、広告ビラも多く配布されているのが実情です。

即時釈放と不起訴を求めて宣伝する人たち=昨年12月27日、東京・霞が関


常識的な配り方

 逮捕された男性が配布したのは「広告」ではありません。日本共産党の「都議会報告」「区議団だより」「区民アンケート」と返信用封筒でした。これが「広告」という範囲にははいらないというのが通常の見方でしょう。

 配り方も常識的で平穏なものでした。日中に静かに共用部分の廊下を歩いて、郵便受けに投函しただけ。やめるよう求めた住人には「入れてほしくないなら、入れません。何号室ですか」と住人の意思にこたえる対応をしました。

 逮捕理由の「住居侵入」自体が成立していません。

 男性に「やめろ」といってきた住人は、携帯電話で「PC(パトカーのこと)を使う」「ガラ(身柄)は押さえる」などの警察用語で警察に連絡しました。

 やってきた警官が男性に「ちょっと事情を聞かせてほしい」といい、男性は同行しました。男性は亀有署で「私人による現行犯逮捕ですでに逮捕されている」と告げられて初めて、「逮捕」を知るという状態でした。

 トラブルがあり、通報があったからといって、警察が即「逮捕」として身柄を拘束し、勾留、送検するなどというのはきわめて異常で、男性の弁護人は「警察による違法逮捕」(勾留理由開示公判での意見陳述)と指摘しています。

男性が不当逮捕されたマンション(中央)=東京・葛飾区


知る権利に応答

 配布したのは公党の議会報告などで、政党支持にかかわらず住民の知る権利にこたえるものであった点は重要です。

 東京・立川市での自衛隊官舎立ち入り事件の無罪判決は、「ビラの投函自体は表現の自由が保障する政治的活動で、民主主義社会の根幹をなすものとして…商業的宣伝ビラの投函に比して、いわゆる優越的地位が認められている」と指摘しました。そして「侵入」にあたるとしながら、「刑事罰に値する違法性はない」と判断しました。

 こうした判断からすれば、男性の行為はいかなる意味でも刑事罰に値するものではありません。

 男性は十数日も不当に勾留されつづけています。男性の勾留期限は十一日まで。その間に起訴・不起訴が決まる見込みです。「民主党、公明党のビラも入っている。なぜ共産党だけねらいうちなのか」という怒りの声も寄せられており、今後の運動が重要になっています。



各戸配布は民主主義の血流
亜細亜大学法学部助教授 石埼学さん

 今回の逮捕は、東京・立川市の自衛隊官舎ビラ配布事件で無罪判決が出た直後のことだけに、あぜんとしました。

 表現の自由は、憲法のさまざまな自由のなかでも、きわめて大事と考えられています。なぜかというと、もっとも権力によって侵害されやすいからです。

 現にビラ配布で社会保険庁職員が逮捕された事件(国家公務員法弾圧事件)、立川の事件、そして今回の事件と、いまの政権を批判する政党やグループばかりをねらいうちにした逮捕が続きました。批判意見を含めて許容されるのが、表現の自由であり、民主主義であることをしっかりつかむ必要があります。

 日本はすでに公の場所での表現活動がきびしく規制され、ほかの先進国に比べても表現活動がしづらい国になっています。そのなかで残されたビラの各戸配布は、とくに日本では民主主義の血流のように重要な手段です。ここに公権力が介入してくるのを許しては、民主主義社会の崩壊につながりかねません。

 逮捕直前に出た立川事件にかんする東京地裁八王子支部判決は、どういうビラ配布なら住居侵入の罪にあたり罰を受けるか、ルールを明確にしようとした判決です。ビラを配るにあたり、無理に入っていったのか、住民の応対を求めたのか、以前に抗議を受けていたか…。過去の最高裁の判決もふまえたうえで判断基準を示し、そのうえで無罪判決を言い渡しています。警察は、そういう最新の明確なルールを無視して逮捕しており、まさに暴挙です。

 さらに今回の逮捕がひどいのは、議会報告や区政に関するアンケートを配って逮捕されていることです。議会制民主主義の立場に立つ公党の有権者への議会活動報告を抑圧するということは、議会制民主主義への直接的抑圧を意味します。

 警察にこのような暴挙をさせない世論の高まりが重要です。政党支持にかかわらず、一連の事件にもっともっと関心をもってほしいと思います。



政党ビラ配り事件判決要旨 

判決要旨 
http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack.cgi?detail+CN016_1

 マンション住戸への政党ビラ配り事件で、東京地裁が28日に無罪を言い渡した
判決の要旨は次の通り。

 【住居侵入罪の成否】

 廊下、エレベーター、階段などの共用部分は住戸部分と空間的にも極めて密接な
関係にあり、無関係な者が自由に立ち入ることができない。住戸部分と不可分一体
で利用される共用部分についても「住居」に当たると解するのが相当。

 犯罪目的や準じるような不法目的で立ち入るのは「正当な理由」のない侵入であ
ることは明らか。しかし本件のように不法目的でない場合、どのような時に許され
るかは共同住宅の形態、立ち入りの目的・態様などに照らし社会通念を基準として
法秩序全体の見地からみて判断するほかない。

 ビラは共産党の都議会、区議会での活動内容などを伝えるもの。受領で住居の平
穏やプライバシーを侵害されるとの危惧(きぐ)や不安感を抱くことは少ない。昼
間の時間帯で誰にもとがめられることなく立ち入っており、滞在もせいぜい7−8
分。

 都市生活者を中心に防犯意識、プライバシー意識に敏感な居住者が増え、オート
ロックシステムを備えたり立ち入り禁止を明示した看板を掲示し、共用部分が私的
領域の性格が強くなってきていることは否めない。

 しかし現時点ではドアポストに配布する目的で、昼間に通路や階段などに短時間
立ち入ることが明らかに許容されない行為であることに、社会的合意が確立してい
るとは言い難く、社会規範の一部とは認められない。

 【立ち入り禁止合意】

 いかなる者の出入りを許すかは各マンションで自由に決められる事項。対外的に
明示されていて、その明示の警告に従わずに立ち入れば住居侵入罪が成立する。本
件マンションでは、管理組合理事会で葛飾区の広報誌を除いて部外者が共用部分に
立ち入ることを禁じる決定をし、管理人に指示。被告の立ち入りは客観的には理事
会の決定を通じて形成された住居権者の意思に反する。

 【外部的表示の有無】

 1階玄関ホール内の掲示板に広告の投函(とうかん)や部外者の立ち入りを禁じ
る趣旨の張り紙があるが、主として商業ビラの投函を禁止する趣旨であるかのよう
にも読み取れ、掲示の場所も通過する場合には目に入られない個所。

 記録簿による入退館の管理は全く有名無実化しており、防犯カメラ設置や各所に
いたずらや犯罪に関する警告の文言が記載されているが、被告は犯罪目的で立ち入
ったわけではなく、被告の立ち入りを禁じる旨を伝えるとはいえない。

 【結論】

 内部的には政治目的のビラ配布目的も含め立ち入りが禁じられていた事実は認め
られるが、その意思表示が来訪者に伝わるような表示がされていたとはいえない。
管理者の意思に反する立ち入り行為を被告がしたとしても「正当な理由」がない立
ち入り行為と解することもできない。

 一般的には社会通念上、本件のようなビラ配りが当然に禁じられていたともいえ
ず、被告の立ち入り行為は住居侵入罪を構成する違法な行為とは認められない。

http://seijiwatch.blog45.fc2.com/blog-entry-401.html


無茶苦茶な判決だな。


よく読むと「ビラ配りは無罪」とは言っていません。(予測される)控訴審で逆転有罪となっても「事実判定では間違っていなかったでしょう?」と言い訳するための論旨になっています。

政治的ビラの配布を住民が拒否していた事実はある。

被告の行為は住民の意思を無視して違法性を有していた。

しかしマンションはこの表示を外部的に表示していなかった。

オートロック等もなされておらず、事実上出入り自由な状態であった。

無罪

だとすると、オートロックが整備されたマンションであれば判断を変えた可能性を示唆したものともいえるんですが、大事なことはそもそも「住民に注意されたにも拘らず、ビラ配布を続けた」という「住民の権利」を侵害した行為であることを、裁判官が無視しているところでしょうね。
この判断を是とするならば、「鍵が掛かっていない住居に無断で入ること」も合法となってしまう可能性もあるし、そのうち、そういう論旨で不法侵入や泥棒の類の無罪を主張する愉快な弁護士が出現して来るでしょうね。
個人的には選挙の際に配布される政党ビラの類は暇つぶしのネタとして歓迎ですが、それは郵便受けまでにしておいてください>地元各政党支部関係者の方。
ただ一般的には政党チラシの利用価値って、ピザ屋すし屋の広告はおろか裏DVDの通販チラシより需要が少ないと思うよ
政党ビラ配り事件判決要旨(長いんで省略) 
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1 Comment/Trackback » 容認できない判決>東京地裁:共産党のビラ配り…

 東京地裁にも頭のイカレタ判事がいる。
末尾に刑法第百三十条を貼りましたが、住居を侵す罪の構成要件としての「正当な理由」てのはさ、居住者にとって正当であるか否 (more…)

トラックバック by 佐藤 健の溶解する日本 — 2006/8/28 月曜日 @ 20:49:51

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ビラ配布無罪判決

被告の男性「表現の自由通じた」 ビラ配布無罪判決(asahi.com 2006年08月28日12時48分)
マンションへの政党ビラまき、被告に無罪判決 東京地裁(asahi.com 2006年08月28日12時33分)

 判決はまず、「どんな時に立ち入りが許されるかは、社会通念を基準に、立ち入りの目的・態様に照らし、法秩序全体の見地からみて社会通念上、許される行為といえるか否かで判断するほかない」との判断枠組みを示した。
 そのうえで「立ち入りの滞在時間はせいぜい7、8分」と短時間だったことを重視。さらに、▽このマンションではピザのチラシも投函(とうかん)されているが、投函業者が逮捕されたという報道もない▽40年以上政治ビラを投函している荒川さんも立ち入りをとがめられたことはない――と指摘。「現時点で、ドアポストに配布する目的で昼間に短時間マンションに立ち入ることが、明らかに許されない行為だとする社会的な合意がまだ確立しているとはいえない」と述べた。

 判決は、明確な「立ち入り禁止」の警告に従わずに立ち入れば住居侵入罪にあたるとしたが、このマンション玄関の張り紙では、「明確な立ち入り禁止の意思表示がされていない」と指摘し、立ち入りに正当な理由があると結論づけた。

  ---------------------------

 結論的には、もともとそれほど目くじらを立てるような事件かと思う事件ですので、無罪でもいいと思いますが、本件は、理論的には「表現の自由」の問題というよりは(無関係とは言いませんが)、「侵入」と言えるかどうかの問題だと思います。

 一軒家の道路に面した郵便ポストに政治ビラを投函しても住居侵入罪にはなりえません。
 それとの対比で、マンションの建物内の通路はいったいなんだ、つまり外なのか内なのか、ということが問題なのだろうと思います。
 そして内としての性格があるとしても、そこに入る人の許容範囲はどこまでか、が問題になるようです。

 今回は政治ビラの配布目的ですが、政治ビラの配布目的を装った強盗犯人だったらどうかという問題がでてきたりして、そうなりますと住人及び住人が積極的に入ることを認めた人以外は拒絶される、つまり住居侵入罪になる、という解釈もあり得ると思います。
 もちろんマンションの構造にも影響されると思いますが。

 これは住人側の安全意識の問題であり(住居侵入罪の保護法益はまさしくここにあると言えます)、それに対して表現の自由がどこまで対抗できるかははなはだ疑問です。

元検


コメント

これはちょっと。

自衛隊の宿舎に反戦のビラをまく。
まあこれは良いでしょうか?
先に何度も立ち入らないでください、と注意されているのにも
関わらず、嫌がらせのようにビラをまく。
何度注意したら違法になるのでしょうか。

Posted by: kattu | 2006年08月28日 16:38 (Top)


 判決の理由を載せてないし、地裁レベルではなんともいえないですね。

Posted by: 名無しさん | 2006年08月28日 17:37 (Top)


自由の背景に存在していなければならない責任性に対する認識度の問題かと
要するに、世の中無責任になっている象徴であろうと思うわけですよ
"おれには何々の自由がある”と言えばそれで何でもやって良いという短絡さ
どんどん幼稚化してるんですね
大したお坊さんだと思いますよ

Posted by: じおんぐ | 2006年08月28日 19:59 (Top)


>市民感覚に沿って

共産党系の皆さんや朝日新聞のいう「市民感覚」というのは、私にはイマイチ理解できません。

政党のビラを、集合ポストではなく、マンションの中にまで入り、ドアに押し込んでいくことが、表現の自由とどう関係するのか理解できない私は、彼らのいうところの「市民」に入っていないのは間違いないようなんですが。

ピザのチラシと政党のビラを同列に論ずるあたりが、なかなか興味深い裁判官ではありますが、仮にピザのちらし配りのお兄さんが捕まっていたとするとこの人も有罪になったのでしょうか?
また、ピザのチラシはあってもジャマにはなりませんが、政党のビラなど興味がなければジャマにしかなりません。

オートロックがついていない、又は入ってはいけない人として具体的に列挙されていない限り、7〜8分程度ならマンションに自由に入っていいということでしょうか?うちのマンションにオートロックがついていて良かったと改めて思います。

まあ、もともとどうでもいいような事件ですが。どうにも最近、朝日新聞と赤旗の区別がつかなくて困ります。

Posted by: じじい | 2006年08月28日 20:00 (Top)


マンションへの政党ビラまき、被告に無罪判決 東京地裁
2006年08月28日12時33分

 東京都葛飾区のマンションに04年12月、政党ビラをまくために立ち入ったことで住居侵入罪で起訴された被告の住職荒川庸生(ようせい)さん(58)に対し、東京地裁は28日、無罪(求刑・罰金10万円)を言い渡した。大島隆明裁判長は近年の住民のプライバシー、防犯意識の高まりに触れつつ「ドアポストまで短時間立ち入っての配布が、明らかに許されないという合意が社会的に成立しているとはいえない」と判断。荒川さんの立ち入りには「正当な理由がある」として住居侵入罪の構成要件を満たしていないとした。

無罪判決後、ガッツポーズで支持者にこたえる荒川庸生さん=28日午前、東京地裁前で
無罪判決後、ガッツポーズで支持者にこたえる荒川庸生さん=28日午前、東京地裁前で


無罪判決に喜ぶ支持者たち=28日午前、東京地裁前で



 判決はまず、「どんな時に立ち入りが許されるかは、社会通念を基準に、立ち入りの目的・態様に照らし、法秩序全体の見地からみて社会通念上、許される行為といえるか否かで判断するほかない」との判断枠組みを示した。

 そのうえで「立ち入りの滞在時間はせいぜい7、8分」と短時間だったことを重視。さらに、▽このマンションではピザのチラシも投函(とうかん)されているが、投函業者が逮捕されたという報道もない▽40年以上政治ビラを投函している荒川さんも立ち入りをとがめられたことはない――と指摘。「現時点で、ドアポストに配布する目的で昼間に短時間マンションに立ち入ることが、明らかに許されない行為だとする社会的な合意がまだ確立しているとはいえない」と述べた。

 判決は、明確な「立ち入り禁止」の警告に従わずに立ち入れば住居侵入罪にあたるとしたが、このマンション玄関の張り紙では、「明確な立ち入り禁止の意思表示がされていない」と指摘し、立ち入りに正当な理由があると結論づけた。

 同種の事件では、立川市の防衛庁官舎での反戦ビラ配布をめぐり、市民団体のメンバー3人が起訴されたケースがある。一審は同罪の構成要件に該当すると認めつつ、刑事罰には値しないとして無罪とした。二審では罰金10万〜20万円の有罪判決となり、弁護側が上告した。

 無罪判決を受け、岩村修二・東京地検次席検事は「検察の主張が理解されず遺憾だ。判決内容を検討し、上級庁とも協議の上、控訴の要否を判断したい」とのコメントを発表した。

     ◇

 〈キーワード:葛飾政党ビラ配布事件〉 04年12月23日、被告の荒川庸生さんは東京都葛飾区内のオートロックではないマンションに立ち入り、共産党の都議会報告や区議会だより、区民アンケートの用紙と返信用封筒を、各階居室のドアポストに配布した。途中で住民男性に見とがめられ、110番通報された。警察で事情を聴かれ、帰宅しようとすると「住民男性によって住居侵入容疑で現行犯逮捕されている」と説明を受け、そのまま23日間、身柄拘束された。



自白に頼らず立件を 無実の可能性 調べ尽くせ


●第3部 インタビュー ミスは防げるか
4 土本武司白鴎大法科大学院教授 (2006年03月10日)

つちもと・たけし1960年に検事として任官し東京高検検事、最高検検事などを歴任。退官後は筑波大や帝京大教授を経て、現在は白鴎大法科大学院教授(刑訴法)。


 検察の最上級官庁の最高検察庁で検事を務めた土本武司・白鴎大法科大学院教授は、「自白に頼らず、状況証拠だけでも立件できる捜査を目指すべき」と強調する。

 −今回の誤認逮捕問題をどう受け止めたか。

 「日本の捜査の特色は『精密司法』といわれ事実面、情状面とも実に緻密(ちみつ)に捜査がなされ、その結果、起訴に対する有罪率も99・9%という高率を誇る。しかし本件は強盗という重大事件なのに『人違い』をした。信じられないことだ」

 「最も責任があるのは、捜査指揮をする警察幹部と警察を主導する立場の検察幹部だ。幹部が捜査方針を見誤ると、修正できずに、最後まで間違ったままになることを示している」

 −本人の自白以外の物的証拠が全くない中での起訴だった。

 「自白に頼りすぎた捜査だったことも指摘できる。自白の信用性の判断要素である『秘密の暴露』がなさすぎる。男性に知的障害があるなら一層、慎重に信用性を検討すべきだった。自白がなくても、状況証拠だけで立件できる捜査を目指すべきだ」

 「捜査段階で被告がすべての事実を否認した『和歌山ヒ素カレー事件』がいい例。捜査当局は状況証拠を緻密に積み上げて起訴し、その結果、極刑が言い渡された。全面否認でも、状況証拠だけで有罪立証ができるという『事実認定のあり方』の見本を示したといえる」

 −犯人でないという可能性を調べる捜査をすべきという声もあるが。

 「それはとりわけ捜査幹部に求められる視点だ。だが、それは捜査に後ろ向きになるというのではない。無実の可能性を調べ尽くすことが、かえって犯人性を高めることになる」

 −日本弁護士連合会は今回の再発防止策として、取り調べの録音、録画化(可視化)の導入を訴えている。

 「一般市民が裁判に加わる裁判員制度が数年後に始まり、刑事司法に大きな転換期を迎える。これまでの自白中心主義の捜査を改めるべきいい機会。その意味で、容疑者を取り調べたすべての様子を録音・録画することは必要だ。裁判員に対して、被告がどのように供述したのか、否認したのかが分かりやすく提示できるという利点もある」

 「ただすべての公判で、膨大な量になる録音録画の記録を証拠提出するのは違和感がある。公判進行が大幅に遅れるからだ。供述の任意性や信用性を争う場合にのみ、証拠として用いるとしたほうがいい」

 −捜査当局は可視化の導入に積極的ではない。

 「犯罪捜査は密行性が本質だが、可視化は時代の流れ。裁判員制度の開始を契機に、状況証拠による積極的な事実認定を進めながら、同時に可視化も行うべきだ。捜査当局は宇都宮のケースを教訓に、録音録画の体制をつくる必要がある」


 下野新聞
つちもと・たけし1960年に検事として任官し東京高検検事、最高検検事などを歴任。退官後は筑波大や帝京大教授を経て、現在は白鴎大法科大学院教授(刑訴法)。



土本武司
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

土本 武司(つちもと たけし 1935年 - )は、検察官出身の刑事法学者。白鴎大学教授。帝京大学客員教授。筑波大学名誉教授。東京都出身。1957年中央大学法学部卒業。東京大学大学院修了。「過失犯の研究」により中央大学から法学博士号取得。

[編集]
主要職歴
1960年 検事任官
東京地方検察庁検事
東京高等検察庁検事
法務総合研究所研修第三部長
最高検察庁検事
1988年 筑波大学教授
筑波大学社会学類長
筑波大学名誉教授
ライデン大学客員教授
ユトレヒト大学客員教授
帝京大学法学部教授
白鴎大学法科大学院教授、帝京大学客員教授
実務に通じた綿密な刑事訴訟法理論で著名。近年ではマスコミでの事件解説でも知られる。また、死刑制度の維持や厳罰化などについても積極的に発言。大学在学中に司法試験に合格し、牧野英一に師事する。五十嵐一・筑波大学現代語・現代文化学系助教授が殺害された事件では第一発見者となる。

 日本の刑事訴訟法学者としては、河上和雄と並び、もっとも職権主義的な立場を強くとっている。

つちもと・たけし1960年に検事として任官し東京高検検事、最高検検事などを歴任。退官後は筑波大や帝京大教授を経て、現在は白鴎大法科大学院教授(刑訴法)。



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